S._34 ページ34
エンジンをかけ、ついたテレビに次々と速報が流れる。
『おー…俺有名人や笑』
顔写真はかなり幼少の頃のもの。
そんなもんで分かるかと、茶の間に居たならつっこめただろう。
マンションには既に黄色いテープが貼られ救急車やパトカーの赤いサイレンでいっぱいだ。
かなり大事になった。
もうあそこには戻れない。
『A』
「………」
『怖いん』
冷たさは含まれていない声色。
けれど、機械質だ。
ハンドルに置いていた手が片方落ちて、真夏に震えているあたしの手に重なった。
どうしようなんて言葉では足りないほどのどうしよう。
でも
協力しなけりゃ良かったという後悔だけはなかった。
何回あの場面に出会っても多分あたしは大毅を引き入れた。
「赤、綺麗だった…?」
怖いという感覚がなくなればいい。
大毅と同じになれたら。
「あたし、大毅を分かりたい…同じになりたい」
噴き出す赤が綺麗だって
嗤って言えるようになりたい。
全色見えてしまうあたしには、分からないの。
あなたがいた黒い世界も
あなたの白くて空っぽな心も
あたしには色がついて見えるから。
『同じになる?』
どこかも分からない道。
街灯のない暗闇。
ブレーキをかけて停止した車。
そして、降り出した黒い雨。
助手席のシートがゆっくり倒されて後部座席と繋がる。
右手が絡まって、始まる熱帯夜。
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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734
作成日時:2019年8月1日 19時