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私は王国騎士の名家、カンタータ家に長女として生まれた。
カンタータ家は第一子が家を継ぐことになっていたため、その長女が次期当主となったのだが、この国では女性の地位は男性と比べあまり高くない。
女が当主になれば、カンタータは落ちぶれてしまう。
そう考えた父、ルーヴェルは長女に“ノア”という男性名を与え、男として育てることにした。
ノア・カンタータは幼い頃からの厳しい教育で、まだ子供ながら騎士団長の父と対等に渡り合えるくらいの剣の使い手になった。
しかし、それが覆ったのはノアが5歳だったとき。
カンタータ家に男子が生まれたのだ。
ネディールと名付けられたその子も剣の才能があり、めきめきと力をつけていた。
そして、ノアが15歳のとき。
ネディールにカンタータ家を継がせたいと思ったルーヴェルは、邪魔者のノアを捨てた。
正確に言えば、1人敵地に送り込んだ。
いくら剣の達人でも、数の優位には勝てない。だから、ノアは死んだということにしたのだ。
だが、その考えに反してノアは山火事に巻き込まれながらも山賊を倒し、川に飛び込んで生き延びた。
しかし、家に帰ったところでカンタータ家に居場所はない。
愛馬も山火事の犠牲になったから王都まで戻ることもできない。
ひとまず山を下りて人里に向かうと、その道中で山賊の残党に絡まれている女の子を発見した。
その女の子はリーフィア・エルヴィス。
私の主人である。
弱きものは助けるという騎士道精神のもとその子を助けてあげると、お礼にと家に招待されたのでついていったらなんと貴族。
彼女の両親に経緯を説明すると、専属メイドとして雇ってもらえることになったのだ。
そして私は“ノア・カンタータ”から“ライカ・フォルタナ”と名前を変え、今に至るという訳だ。
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作者名:月兎 | 作成日時:2023年6月27日 22時