メイドのライカ (ページ5)

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『リーフィアさま、お飲み物をお持ちいたしました。』

「ありがとう。ちょうど一息つきたいところだったの。パーティって疲れるわね。」

まったくその通りである。

このパーティは一見にこやかな笑顔溢れる穏やかな会だが、笑顔の仮面の下にはどろどろとした貴族社会の闇が蔓延っている。

王国の東端、簡潔に言えば田舎のヴィーナルでのびのび育ったリーフィアさまにはつらいだろう。

それと私には、リーフィアさまに近づこうとする良からぬ輩を牽制するという仕事がある。
先程も私が飲み物を取っている隙に話しかけようとした男がいたが、素早くリーフィアさまの元へ戻って阻止した。

因みにこの仕事はリーフィアさまのご両親エルヴィス夫妻から依頼されたものであるため、ストーカー、あるいはヤンデレだという意見は受け付けておりません。

「あら、ごきげんよう。貴女、見たことがない顔ね。お名前は？」

すると、取り巻きを3人程従えた女性がやってきた。
豪華な、言葉を変えると派手なドレスを身に纏い、人を見下したように話す高位貴族令嬢だ。

同じ高位貴族令嬢(元も含む)でも、あのぽわぽわしたリーフィアさまのお母様、コゼットさまとはかなりの違いだな。

「リーフィア・エルヴィスと申します。ヴィーナルにずっといたので、こういったパーティに出席するのは初めてなんです。」

「あら。そんな田舎出身なら、その質素なドレスなのも納得ね。よくお似合いよ、リーフィアさん。では。」

ポーカーフェイスを保つ。

どれだけ憤っても、先に仕掛けてしまうと不利になるのは間違いなく此方だからだ。
リーフィアさまの立場を悪くする訳にはいかない。

確かに、リーフィアさまのドレスはとてもシンプルである。
だが、それはリーフィアさまの希望のもと、魅力を最大限引き出すために私が選んだものだ。

リーフィアさまには派手なドレスは似合わない。
だから淡い色とシンプルなフォルムで、妖精のような美しさと優しさを際立たせているのだ。

それと、王子の婚約者になるためには、けばけばした格好は避けるべきである。なぜなら相手はその威圧感から身構えてしまうからだ。

それに王子は派手な女は嫌い･･･おっと、口が滑った。