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「ライカ?ラ、ライカ・・・?」



大勢の人に流されて、気づけばライカが側にいなかった。



どうしよう・・・!どうしたらいいの・・・?



ライカが側にいないことで、不安が胸を支配する。

王都の市場なんて来たことがないからどこに行けばよいのか分からない。
周りも知らない人ばかりで頼れる人はいない。


流されるままに歩いていると、いつのまにか細い路地に迷い込んでいた。大通りとは打って変わって暗く、湿っぽい道だ。



ここは、まずい。


本能的にそう感じ、大通りに戻るためにくるりと振り返って走り出そうとした。



「やっぱり可愛い顔してんじゃねぇか。これは当たりだ。」

「さっきメイドみたいな奴といたし、お忍びの世間知らずなお嬢サマだろ。」



でも、振り返ったその先には背の高い男性が数人いて。



「そんな顔すんなよ、俺らと楽しいことしようぜ?」

「やッ、やめてくださいッ!」

「大丈夫だって。な?」



手を掴まれそうになって一回振り払ったものの、もう一度手が伸びてきて、強い力で掴まれてしまう。

抵抗を試みるが、彼らの力には敵わない。
そのまま路地の奥に連れられてしまった。



「いや!離してッ!助けて!」

「こんなとこに助けなんかこねぇよ。さっさと諦めて大人しくしな。」

「やだッ!ライカ!誰か・・・!」

「黙らねぇと痛い目見るぜ?こんな風にな!」



男性の1人が大きく振りかぶる。

叩かれるッ!

怖くて、怖くて、ぎゅっと目を瞑る。



だけど、想像していた痛みはいつまで経っても感じられなかった。


その代わりに誰かのうめき声と倒れる音が聞こえる。
私の手を掴んでいた手も離れた。



「おい、大丈夫か。」



どこかで聞いたことのある声にゆっくりと目を開けると、怖い男性たちは倒れていて、知らない若い男性だけが立っていた。



「大丈夫かって聞いているんだ。」

「あっ、だ、だいじょうぶ、です。」



この男性が助けてくれたんだ・・・!


フードをかぶっていて顔はわからないが、20歳前後だろうか。
着ている服も簡素だけれど上質で、この人も私と同じお忍びなのかなと思ったり。



「あ、あの!助けていただいてありがとうございました!」

「治安維持のためだ。礼はいら」

「それでも助けていただいたのですから!本当にありがとうございました!」

「お、おう。」



バッと頭を下げて感謝を伝える。
この気持ち、少しでも伝わるといいな。

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作者名:月兎 | 作成日時:2023年6月27日 22時

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