4.人は見た目が9割 ページ30
「わぁ、人がたくさんね!ライカ、次はあっちに行ってみましょう!」
『リーフィアさま、逸れないでくださいね。』
昨日も今日もそして明日もリーフィアさまが可愛い。
王都の街にどうしても行きたいと可愛くお願いされたらもう断れる奴はいない。断れたらそいつはもう人間じゃない。
だからリーフィアさまに負けた私はこうやってお忍びで王城を抜け出して来ているのだ。
因みに、紛れるために服は町娘仕様のシンプルで簡素なワンピースである。
簡素なワンピースによってリーフィアさま自身の美しさが引き出されていて、全私が喜んでいる。いつもの上品なドレスもいいけれど、これにはこれの良さがあると思う。
リーフィアさまに着いていくと、食べ物エリアに来たようだ。
「そこのお嬢ちゃんたち、チェリーパイはどうだい?お安くするよ!」
「ライカ!」
『・・・わかりましたよ。』
リーフィアさまにとって屋台というものは未知のものなのだろう。チェリーパイをキラキラした目で見つめている。
『すいません、2つください。』
「50ルークだよ!ありがとね!」
店主からチェリーパイを受け取ってリーフィアさまに手渡す。
「パイをフォークを使わず食べるなんて初めてだわ。怒られてしまわないかしら。」
『街ではそれが普通ですよ。ある意味街ならではの体験ですね。あ、美味しい。』
「あ、食べるのが早いわよライカ!」
お育ちの良いリーフィアさまは葛藤と闘いつつも、はむ、と一口食べる。そしてぱぁっと顔を輝かせた。
・・・あれ、なんだろうこの違い。
私だって元貴族でお育ちは良い方だと思うんだけど、初めて街で食べ歩きしたときもこんな可愛くなかったはず。
まあ元男だからという理由もあるんだろうけど。
いや、それ以前の問題か?
「ん〜っ!おいしい!」
とにかく眼福。
リーフィアさまはチェリーパイに夢中、私はリーフィアさまに夢中になっている間にパイは食べ切ってしまった。
「ライカ、あっちのお店に行ってもいいかしら?」
『はい。其方には雑貨などのお店がありますよ。』
「ライカ、早く行きましょ!」
『リーフィアさま、お待ちください・・・!』
小走りで向かうリーフィアさま。
すると、運悪く大勢の人々が近くの建物から出てきて人混みに流されてしまった。
くそ、ここは劇場だったか・・・迂闊だった。
リーフィアさまの絹のような金髪が遠くなっていく。
まずい、見失ってしまう・・・!
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作者名:月兎 | 作成日時:2023年6月27日 22時