メイドのライカ (ページ24)

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「始めッ！」

あーあ。始まってしまったよ試合が。

ほらご令嬢がめっちゃ注目してんじゃんつら。
私はメイドとしてリーフィアさまとスローライフを送りたかっただけなのに。

「ぶっちゃけ女の子に乱暴はしたくないんだけど･･･でも命令だし、楽しそうだし。こっちからいくよライカちゃん！」

『いつでも良いですが、“ちゃん”付けはしないでください。』

もう腹を括って懐かしい木の剣を握りしめる。

正面から突っ込んでくる細マッチョザック。

筋肉はパワーでゴリ押ししてくるタイプが圧倒的に多い。
私は勿論力では勝てないが、その代わりに彼らの動きは読みやすい。

今回もこのまま大振り･･･いや、これは違う。

「！これを避けるって･･･！」

正面からの大振りだと相手に思わせておいて、直前で横に逸れ、相手が対応できないうちに横から突く。

そうだ、ザックは筋肉のわりに頭脳派だった。
かといってパワーでゴリ押しをしない訳でもない。
いわば、彼は筋肉と頭脳のマリアージュなのだ。

「やっぱり君は只者ではなさそうだ、ねッ！」

『いえ、ただのメイドです。』

と言いながら振り下ろされたザックの剣を押し返した。

彼はまさか女性に押し返されるとは思っていなかったのか、目を少し見開く。

ちょっと、誰ゴリラって言った奴。ぶっ飛ばすよ？

これにはパワーはあまり必要ないのだ。
剣の角度や力の加減向きなどを少し意識するだけ。
これが騎士団マッチョとの対戦で磨いたテクニックというものである。

ザックの重い一撃を受け流し、バランスを崩した彼の背後に素早く回り込む。そして、首筋に剣の切先を突きつけた。

「勝者、ライカ嬢！」

いや勝っちゃったよ。
王国騎士団の有望株に勝っちゃったよ。

スローライフが崩れていく音が聞こえる気がするなぁ。