【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 4

CROWN No.170 ページ20

‥




滑らかに、艷やかに、でもどこか哀しい。
そんなピアノ演奏の元、私は歌う。
ラップの部分は、歌ってない。
事前に、 "GENERATIONS" が収録したって。
いつ録音したの？



いつもは激しいこの狂宴場を、今は私が鎮めているような気がする。
もちろん、ただの感触でしかないけれど。



王冠はここまで出しゃばっていいのだろうか。
あくまでもここを取り仕切って、1番楽しんでいるのは "彼ら" 。
ああ、そうか……さっきのオープニングアクトと一緒だ。
私も彼らをおだてるための前座でしかない。



……そう、思いたいのに



もうすぐサビに入る。
すると、わっと歓声が上がる。
何でって？
メインが、来たから。



黒いスーツに身を包んで、優雅にステージに上がってくる。
ファンのイメージするキャラクターの通りに振る舞いながら。
左からは笑顔で挨拶をされ、右からは手を差し伸べられる。
ああ、なんて贅沢な……地獄なんだろう。



歌っていても思い知らされる。
ここにいる "彼ら" は主役で、主宰で、輝かしいけど犯罪者で。
狂気を持っていて、欲望に忠実で、恐ろしいけど美しくて。



こんな人間に、何故自分は選ばれたのか。









──花びらの、ように散りゆく中で……









ああ、その私に差し出される手。
私は "彼ら" の前座。
ただ、そうでしかないのに。
そう思いたいのに。



涼太の静かで優しい音。
龍友の高くて穏やかな音。
ふたつの音が伴奏と混じり合って、私の声を飲み込んでいく。
なんて哀しくて、なんて妖艶なんだろう。



ふたりだけじゃない。
皆から向けられるその表情に揺さぶられるのは、何でだろう。
だから私も、その表情に応えたい、そう思ってしまう。



ステージの上に上がってる間ずっと、
私は彼らの視線に囚われている。




‥

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