【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 4

CROWN No.155 ページ5

‥




これで最後。
手元に残った1枚を、マスの引いてある数字の上に乗せる。
どうして "いつも笑顔" なのか。
その理由を知るために、ガヤが集まりだしつつあるこのルーレット盤を睨んでいる。



完全に運任せ。
だから、こんなに考え込む必要はない。
ないのは分かっているんだけど……
勝てなくていい。
でも、負けるつもりだけはないから。



眉間にシワを寄せて、自分の手に握りしめるチップを見る。
こんな小さな円形が10万の値打ちとしてカジノに出ているなんて、あんまり信じる気になれないなあ。
そんな、どうでもいいことも考えてしまう。









隼「これは運任せのゲームだよ。どこでもいい。
　どこにするの？」


A「……」









もしかして、隼は知られてもいいと思ってる？
でもそしたら、わざわざ賭けをする意味は？
そもそも、何でカジノフロアを作ろうと思ったのか？
自分達のコンセプトが集まって、この "BIG CITY RODEO" は作られたと言っていた。



数字の数は、00と0〜36までの計38個。
つまり当たる確率は38分の1。
ふたりとも外れたら？
その時はおそらくそれまで。



ふたりの間にそんな話はなかった。
それで終わり。









隼「おー」


A「……」









隼が黒の13で、私は……隣にある、赤の1。
真向かいではなく、隣にある数字を選んだ。
と言っても、隣を選んだのは私ではなくて隼なのだけど。
手に残った最後の1枚。



外れることを願う。
知りたいと思いつつ。
でも、隼のところには入らないでほしい。
こちらも本心。
過去は、そのまま自分の人生で、自分そのもの。



全員がそうと言うわけではないけれども、やはり。
私は嫌だ。
自分の犯した罪を、自分の過ちを、自分から他人に話すなど。
兄弟がいるとか、好きな食べ物は何だとか、そんな安価で質のいい話ではないのだから……









ディーラー「では、参ります」









ホイールが豪快に回る。重たい音を立てて。
ディーラーが玉を落とす。軽く、自由落下に任せて。
その玉は、ホイールと反対方向に走る。目が回りそうだ。
そして、次第に金属音は小さくなっていく……



『あっ』
ふたり同時に声を漏らす。
玉は一瞬、ふたつの数字の間の仕切りの上に乗った。
そのふたつの数字とは、まさに私達が選んだあの数字。



刹那、玉はバランスを崩し、片方の数字へと重心を預けた……──




‥

CROWN No.156→←CROWN No.154

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す