CROWN No.137 ページ37
‥
私は伝えた。
萩花に、少ないけど……言葉を。
口下手な私が、思ったことをそのまま……
とは行かないけど。
伝えた後、私は謝った。
『こんなことしか言えないけど』
萩花は……泣いた。
驚いたような顔をして、1筋の涙を目から落とした。
でも、ただそれだけだった。
夏恋「お姉ちゃん……」
萩花「戻ろ」
伏せた目に、光が反射する。
すごく、綺麗だと感じた。
口角は上がりも下がりもしなかった。
耳を弄るわけでもなく、髪を触るわけでもなく、ただ。
ひと筋の涙を流した。
夏恋は萩花に何か言葉をかけようとした。
夏恋も、何か吹っ切れたような、和やかになったような表情をしていた。
私は……このふたりに、適切な言葉をかけることができたのだろうか。
吉なのか凶なのかは、判らないけれど……
でも、少しでも手を差し伸べることができていたなら。
萩花「……ありがと、 "CROWN" 」
部屋を出る時、萩花は振り返って言った。
初めて見る、萩花の心からの笑顔だった。
.
.
あれから結局寝れなくて、寝不足で迎えた朝。
医務室でそのまま朝を迎えた私は、朝ご飯を持ってきてもらった。
ご飯は……相変わらず美味しくない。
食べ終わった後は、もう通常通り。
作業、昼食、職業訓練、夕飯、就寝準備……って流れ。
私は……うつらうつらしながら忘れてた。
今宵、迎えが来ることに。
気がついたのは、風呂の後に部屋に戻る途中……廊下。
私はふと窓の外を見た。
塀に囲まれた、ただの中庭。
そこに現れた人影に、私は一気に目を覚まさせられた。
そこにいたのは、 "彼ら" のうちのひとり。
囚人番号は……ええと、何だっけ。
廊下の外壁にもたれかかって、ひとり上を向いていた。
同じ方向に目を向けたけど、何もない。
都会から少し離れていたとしても、空の光は地上の光には負けるらしい。
──まるで、黒い海
都会の中心に行くほど、星は見られなくなる。
それは、地上の光が強すぎるから。
後ろからの光が強すぎて……
前にあるはずの見たい光が見られないなんて。
ふと視線を戻すと……
……あれ?
さっきまで見受けられた人影は、消えていた。
それと同時に聞こえた、靴音。
この時間には合わない、硬い踵が地面と反響し合う音。
A「!」
「……気づいてないとでも思った?」
それと同時に、思い出した。
‥
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シェリル(プロフ) - 最初から一気に読ませていただきました。小説に引き込まれ、楽しくドキドキしながら読ませていただき、素晴らしい小説に出会えました!書くのは大変だと思いますが、京羽さんの小説の虜になってしまったので、これからも応援しています!オチは片寄くん希望です。 (2018年12月23日 18時) (レス) id: 04471f650b (このIDを非表示/違反報告)
さぁや(プロフ) - お話の構成や、人物の様々な表情が細かに書かれており読みごたえがありました。片寄くん希望です。 (2018年10月25日 17時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
たちばな(プロフ) - 京羽さんの言葉のセンスやとても凝っているお話の構成が大好きです。読むたび次話が楽しみでなりません。これからも楽しみにしています! オチは玲於くん希望です (2018年10月23日 22時) (レス) id: 37da8e3cba (このIDを非表示/違反報告)
殺し愛(プロフ) - BIC CITY RODEOからこの世界観を作り出すなんて凄いです!GENEのメンバーも現実設定の様で違う様な…独特の設定で面白いです。最後に、オチは隼君が良いです! (2018年10月22日 17時) (レス) id: ee020fb2bb (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します!京羽さんの語彙力わたしに分けてほしいです、、笑 オチは亜嵐ちゃん希望です!かつこいい亜嵐ちゃん期待してます!!! (2018年10月22日 6時) (レス) id: bc935dea58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kyoh. | 作成日時:2018年1月26日 0時