CROWN No.80 ページ30
‥
隼に呼び出されて、何の話かと思ったら。
『気になってる人いる?』なんて。
いるわけない。
そもそも、貴方達が私を気にすることなんてことがないのでしょうに。
事実も皮肉も込めて、私は隼に、『振り回されてるんだよ』と言う。
思い当たる節を浮かべたのか、隼は視線を上に上げて、『たしかに』と言った。
A「時間なら、沢山ある。
けど、ここにいるより独房で眠っているほうがいい」
隼「まあまあ、そう言わずに」
シャンパンをぐいっとひと飲みする隼。
あくまでも炭酸であるシャンパン。
彼は飲み干した後、口を抑えてじっとする。
でもすぐに視線も体もこちらに向ける。
隼「俺は、Aちゃんのこと知りたいな」
A「何それ」
隼「思い出話、しない?」
A「嫌」
ほぼ間髪入れずに私が答えると、隼は『ははっ、だよねえ』と欄干に両手をついて、空を仰ぎ見た。
空には星は見えない。
真っ黒な海が、逆立ちしているみたい。
でもすぐ真剣な顔になって、私の目を見る。
ふと私の背中越しに何かを見たようだけど、すぐにまた視線が戻って。
その表情には愛嬌があって、たしかに誰とでも話せる感じが覗える。
……誰も、そんなことは言っていないけど。
隼「……今はいいや。でも、Aちゃん」
A「何?」
隼「君の存在は、今までの奴らとは違う。
既に "俺ら" をかき乱してること、覚えといてね」
A「何、どう言うこと」
隼は何かを言いたそうだったけど、多分それは、私にとっては訊かれたら困ることで。
去っていく背中を止めはしなかったけど、それよりも気になることができてしまった。
『既に "俺ら" をかき乱してること、覚えといてね』
私がここにいることが、何かを崩し始めているのか。
私が彼らと話すことで、何かを壊し始めているのか。
── ……
顔に、仮面を貼りつけて。
何も起こっていない、何も聞いていない、何もしていない風を吹かせて。
私は、夜風に肩を震わせた後、テラスから中に戻った。
ふと気づくと、窓の傍に、グラスを持った裕太がいて。
ああ、さっき隼が気づいたのは裕太だったんだ。
そんなことを思いつつ、彼に近づく。
グラスを見つめたままだった彼は、私の靴音ではっと顔を上げた。
‥
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な - 昨日見つけてここまですぐ読んでしまいました!凄くみんなの過去が気になって惹き込まれます!!!これからも応援しています! オチは裕太くんか隼くん希望です! (2018年3月5日 12時) (レス) id: f0e5b106b0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐっちー(プロフ) - いつも見ています!主人公の過去が気になって、いつもドキドキしながら見てます!これからも頑張ってください!応援してます! (2018年1月25日 19時) (レス) id: 900406c4cd (このIDを非表示/違反報告)
星華(プロフ) - 初めまして!楽しく読ませていただいています。オチは誰でもいい気がしてきました笑頑張ってください! (2018年1月25日 18時) (レス) id: f0eebf7f9c (このIDを非表示/違反報告)
和佳奈(プロフ) - これからどんな風になるのかどんな過去があるのかすごい気になります!!オチは龍友がいいです!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 2時) (レス) id: 74371510d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!前にオチは亜嵐くんがいいって言ったんですけど、読めば読むほどどのメンバーのオチも気になって仕方がないです笑 でも1人にしぼるなら亜嵐くんで! 大変だと思いますが、頑張ってください!応援してます!! (2018年1月23日 11時) (レス) id: fea3c16bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kyoh. | 作成日時:2017年11月12日 20時