13部屋目 ページ13
「……どこまで行きますか?」
「え、えーと、
俺は母に渡されたメモ用紙を見ながら目的地(そこから少し歩くことになるが)の名前を言う。運転手はそれを聞くとこちらを見て「ああ、もしかして施設入居者だったりするかい?」と聞いてきた。それに頷くと彼はだったらそこまで送るよ、と言って車を発進させる。料金、間に合うかなぁ。と思いながらちらりと財布の中を確認すると彼は笑いながら「料金は蓬園まででいいから」と言う。
優しい人でよかった。と思い、礼をいうと彼は「実をいうとねぇ、家もあそこにお世話になったことがあってね」と話し出す。
「運転手さん、施設で結婚したんですか?」
「そうそう、相手が施設内で生まれた人だったからねぇ。まぁ、男やもめになってすぐに息子も成人して都会行っちまったけどねぇ」
なはは、と笑う彼は少し寂しそうだった。
蓬園の前につくと彼は車を止め、料金の確認をする。俺が料金を支払うと彼はまた車を走らせ、施設についた。
「ありがとうございました」
「いえいえー、元気な子供生むんだよー」
運転手さんはそう言うと元来た道を引き返していく。
「……ここが、俺が生まれた施設かぁ」
今日からお世話になる施設はパッと見は団地だった。
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腐女いちごう - 期待 (2017年4月29日 11時) (レス) id: 9a3b6eea55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンネ | 作成日時:2017年2月3日 16時