55:戻ってきた台風 ページ16
「どういうつもりで休んだの」
楽屋のソファに足を組んで座る天。
その目の前には音葉によって肩をがっちりと掴まれているユウリが立っていた。逃げることはできそうにない。
「どーしても手を離せない事情があったんです! でももう大丈夫です! あたし、Aのことも音葉のことも、もう一人にしませんから!」
ユウリがわざとらしく敬礼すると、天は片眉をぴくっと吊り上げた。本当に反省しているのだろうか。
天が呆れていると、ユウリが腰を折って小声で囁く。
「Aのこと泣かせたら、九条先輩に怒られますもんね」
「そうだね」
天は笑って腕を組む。ユウリは戦いを挑まれて喜ぶような笑顔を見せた。
「そんなことより見てください!」
そう言ったユウリが急に天の前に一冊の雑誌を広げる。それはだいぶ前にアイラビットが受けた特集記事だった。アイラビットの三人が寝転んで撮影したもので、ユウリと音葉の間にAが写っている。天にはそこまでしか見ることができなかった。
「わああ!」
なぜなら、どこからか飛んできたAの手によって雑誌が勢いよく閉じられたからだ。そのまま雑誌を胸に抱きしめるA。
「ユウリ、なに、してるの」
Aは珍しく怒っていた。
「え、Aがとびきりセクシーに写ってたから先輩に見せようかと」
ユウリはなんともない顔でそう答える。
「見せなくて、いいの」
Aは顔を真っ赤にして強い口調で念を押した。
「ええ? なんで?」
ユウリは本当にわけがわからないといった顔で首を傾げた。
天の反応がないのでユウリが口を尖らせる。
「猫耳でいい反応が見れたから、今回はその上をいくと思ったんだけどなあ」
ユウリの言葉に、また余計なことを、と思った天だが、視線は雑誌の名前を確認していた。
178人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:兎田夏 | 作成日時:2017年1月1日 0時