第15話 ページ27
【風磨目線】
偶々今日の仕事は昼過ぎに終わって、Aの見舞いにでも行こうと病院に行った。
Aの病室の前に着けば、どうやら中島も来ていたようで、Aと何か喋っている。
折角兄妹でいるところを邪魔してしまうのは悪いかな、と思って、どうしようか迷っていたところで、微かに聞こえたAの声。
「…私、風磨君の事、…好きになっちゃったかも」
聞き間違えかと思った。
けれど、それは聞き間違えなんかじゃないようで、中島の顔も驚いた表情になっている。
「………マジで」
誰に言うわけでもなく、そう呟いてから俺は慌てて病室の前を後にした。
どこに向かうでもなく、ただAの病室から離れるように足速に歩く。
自分の足音と同じようにドキドキと心臓の音がうるさく聞こえる。
「菊池…っ」
「うわっ」
急に後ろから名前を呼ばれて、同時にガシッと掴まれた俺の右腕。
急停止させられて、少しよろけてから振り返れば、そこには中島の姿。
「………あ」
「…さっきまで、外、居たろ?」
「………」
「Aの。……その、…聞いてたよな」
「…あぁ。まぁ…」
まるで、自分の事のように、中島の目はオロオロと動揺した様に動いている。
すぐに中島に、ぱっと腕を離されて、ぶらんと俺の腕が放られた。
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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時