禪院家の悪女—second—

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思考を止める。

仮に私が内通者を特定したところで、裁くのは別の人間の仕事だ。

紙をぐしゃりと丸め、呪力で塵にする。

内通者が学生ならば、まだマシな方だ。

簡単に切り捨てられる。

ある程度地位のある者ならば、五条悟が動くだろう。



「あの、禪院さん、大丈夫ですか……？」

無表情でいたためか、補助監督が声をかけてきた。

目尻を下げ、穏やかに見えるように笑う。

「ありがとうございます。大丈夫です。少し疲れてしまったみたいです」

「そうですよね。なら、早く帰って休みましょう！」

アクセルが踏まれる。


目を閉じて、眠るふりをしながら思い返す。

高専にあれ程大規模な襲撃を起こせる呪詛師は、ごく限られる。

呪詛師と聞くと、いつも頭に浮かぶ。


＿＿＿＿＿＿＿＿夏油傑。


去年起きた未曾有の呪術テロ、『百鬼夜行』の首謀者。

乙骨憂太と戦い、敗北し、親友に看取られ、死んだ男。

夏油一派の呪詛師は、ひとりを除き、未だ見つかっていない。

非術師の皆殺しを望む呪詛師にとって、高専を襲う理由はない。


何か、大きな謀略が動いているのは間違いないと思う。

それが何か分からない内は、変わらず過ごすのが最善。



携帯が短く震えた。

着信ではなくメールの通知音。

『五条悟』という名前が見えた時点で、用件はだいたい察した。

案の定それは、甘味屋で約束した、2人で会う日程の確認だった。

息を吐いて、返事を打ち込み、送信する。

車窓から見える景色を眺め、しばらくは何も考えなかった。

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