１６．止められるとは思ってなかった ページ16
「この野郎っ」
リエは鉄バッドを躱し、地面に衝撃が吸収されたのを見計らって手に取った。ゼンめがけて走り出して、竹刀のように振り回した。こう見えてリエは小さい頃剣術を心得ていたのだ。
「危ねーことするな、おっさん！」
「お前はそんなもの振り回すな、俺より危ねーわ」
舌打ちがひとつ聞こえた後、リエの振り回していたバットが止まった。ゼンが左手でその動きを止めたのである。
まさかゼンが止められるとは思っていなかったのでリエはきょとんとした顔をした。リエがいくら若いとはいえ、動体視力の点ではゼンの方が上なのだ。リエの手からバットが抜き取られる。
「いいか、よく聞け」
ゼンはバットをその辺に放っておいて、リエの右腕をぐっと掴んだ。
「俺、休暇もらったことなくね？」
――言われたくないことを、遂に言われてしまった。
リエは勿論知っていた、ゼンに休暇を与えたことがないことを。リエの両親が生きていた時はゼンにも休暇があったらしいが、リエが社長になってから与えていない。
バレたくないものがバレてしまったのだ、リエは冷や汗を流したまま顔を強張らせる。
一方、ゼンの表情は真剣そのものだ。
リエは甘えていたのだ、両親が死んでから。ゼンなら自分の会社を助けてくれる、経営の支えになってくれる、二人三脚を自然としてくれると。
自分も休んでいない、社員のために会社を改善している。
自分と同等の社会的地位――社長と従業員なのだが、ゼンの方が圧倒的に人気であるので実際の地位はそう変わらない。皇帝と教皇の違いを説明せよと言っているようなものだ――であるゼンを前にして、休暇の最初の文字も出てこなかった。
「おい、リエ。なんとかいえ」
「じ、実を言うとだな……」
リエはごくりを息を呑んだ。
「経営状況が芳しくなくて、有給休暇というものは……」
「いやいや、俺のおかげで毎年経営は潤ってんじゃん」
そういえばコイツに年末の決算を見せた気がする。
「えっとだな、本当はゼンは【役員】であり労働基準法というものは適用されなくて――」
「へ〜、じゃあ俺家帰ったら雇用契約書を見直してみるわ」
「ああああああ、ごめんなさい！ 休暇あげます、休暇がほしいんだろ、お前は！！」
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しまくろしるる(プロフ) - レイチェル・ハジェンズさん» はい、のんびり応援します！レイチェルさんも自分のペースで書いていってくださいねー (2016年11月27日 0時) (
レス) id: 5ed7260065 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - しまくろしるるさん» うぎゃー！ しまくろしるるさん、御無沙汰しております。読んでくださり、ありがとうございます。頑張って書いていくので、楽しんで読んでもらえると嬉しいです。 (2016年11月25日 21時) (レス) id: f158aaa837 (このIDを非表示/違反報告)
しまくろしるる(プロフ) - 新作おめでとうございます!!すごく面白そうなので楽しみにしてます!! (2016年11月25日 20時) (レス) id: 5ed7260065 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル・ハジェンズ | 作成日時：2016年11月24日 22時
