367話 ページ8
それはうれしいことでもあり、恥ずかしいことでもあった
(仲良しみたいだ)
そうだ。ケンカまでするほどの仲になれた。
__何も残らないかもしれない、でも、孝明くんなら
揺らがない確かなものをくれるかもしれない。
私がいつか忘れた時、孝明くんなら憶えていてくれる、気がする。
―――1番こわいのは、何も残らないことだから。
り「Aちゃん?」
『っあ、ごめん』
り「それで?どうするの」
『どうって?』
り「どっちかと付き合うの?
それとも他に気になるひとがいるの?」
『誰も1番じゃないっていう選択肢はないの?』
りぶくんが目をぱっちり開く。真っ黒い瞳が、少しくらんで私を見据える。
驚いてるのは私の方だよ、どうして誰かしら好きなひとがいることが前提なのさ
り「…そっか、うん。よくわかった。Aちゃんはやさしいね」
そう言う彼も、やさしい顔で私の方を見る。
目を細めた学校の王子様は「でもね」と続けた。
り「ひとを好きだと想う気持ちを、見逃さないようにね」
*****
目の前をくーらーくんが走って行く。
りぶくんの言っていた通りだ、2、3年生のギャラリーが
みーんな音研、つまりくーらーくんを応援している。
『くーらーくん頑張れーっ!!』
歩幅が1歩、また1歩と大きくなっていく。あっという間に2走のれをるちゃんのもとへ。
オリンピックの日本代表みたいにきれいなパスで
大きい橘から小さい橘へとバトンが渡っていった。
な「れをるーっ頑張れぇ――っっ!!」
(呼び捨てだ)
なんだか微笑ましい。
私も声を出そうと再度トラックに顔を向けたところで
走り終え、ひざに手をあてて屈んでいたくーらーくんと目が合う。
ピースサインをこっちへ突き出して、ニカッ、て笑った。
(まぶしくって敵わないや)
れをるちゃんは1位のまま、3走の夏代くんにバトンを渡した。
私たち3組の応援する声がいっそう大きくなる。
よかったね孝明くん、みんな「がんばれ」って言ってくれてるよ
__いつもへらへらしてる金髪きのこが、めずらしくまじめそうな顔をして
な「Aちゃんほらっ、夏代来るよ、通るよ、ほら!!」
『えっ、ちょ、え?』
ばしばし背中を叩かれる。あんまり痛くない。
(えぇい)
ごちゃごちゃ考えるのはなしだ、いろいろ気にしないのがいいんだ、
『夏代くんがんばれぇーっ!!!!』
まじめそうな顔を途端にニヤつかせて
スピードを少しあげ、アンカーのしんさんに突っ込んで行く。
393人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アゲハ @ 元HIKARU(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!体育祭、楽しみです!!これからも応援しています。いつも素敵なお話をありがとうございます(*^^*) (2017年4月14日 17時) (レス) id: cd624d2203 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:モノクロメロディ―。@ついった | 作成日時:2017年4月13日 22時