【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

S!N's Birth Day(わず) ページ49

クラスメイトも他校の女子も
みんなみんな、みんなうるさい。

だからこの日はいつも、屋上に逃げてくる。

学校で１番高いこの場所は、屋上に出て、そのままぐるりと裏にまわってはしごを上ると来られる

“そよそよ”より強く
“ざーっ”よりは弱く

風は最高の風力で俺の耳元を、頬を吹き抜けていった。


(いい日だ。穏やかな誕生日。)


ごろんと固いコンクリートに横になって目を閉じた。
あと数分もしないで、俺はきっと眠りにつくだろう。

そんな、これから死ぬのかなってくらい穏やかな気持ちでいたのに

―――俺にとっての“異分子”がまぶたの閉じるのを止めた。

『風きもちい…』


Ｓ「こら」

『えっ!?』
Ｓ「授業もうすぐ始まるでしょ、早く教室行きなさい」
『え、しんさん!?なんでなんで、だってここ１、２年の教室棟…』

Ｓ「３年と部活の棟の屋上は施錠が固いけど、こっちのは蹴れば開くんだよ〜ん」

「あちゃ〜」なんて額をぺちんと抑えて、眉を下げて笑った。

早く向こう行けったら

『先輩も授業行かないとですよ』
Ｓ「いーの。今日は特別な日だから、俺様の日だから」

カツカツとはしごを上ってきたAが首だけをひょっこり出して、傾げた。

(何も嘘はついてない。今日は俺の日だ)



『おお!!いいですね、それ』



…てっきり「なんですかそれ?」って聞いてくると思ったのに。

……ん?何コレ、俺そう言ってほしかったってこと?かまちょ?
「今日俺の誕生日でさぁ、」とか言ってみたかっただけなやつ?

(やっぱ調子狂うわぁ)


Ｓ「俺寝るからさ、なんか子守唄歌ってよ」
『えぇ?さっき授業行けって言ったじゃないですか』

くすくす笑う。風が吹いて、Aの前髪がふんわり持ち上がった。
そういえばこの子はけけの好きな人だったなぁ。どうもしないけど。

『何がいいですか?』

そういえば音研の半分以上がこの子のこと好きなんだったなぁ。どうもしないけど。


『おしりかじり虫とか?あ、だんご三兄弟とか、』
Ｓ「チョイスおかしいでしょ」
『あっじゃあ泳げたいやきく』
Ｓ「待てい」


どうしてそんなこと言ったのかはわからない



Ｓ「ハッピーバースデー、歌ってよ」



また首を傾げた後、「あっ特別とか俺様の日って、そういうことですか!!」と
笑顔になる。俺の誕生日がわかって何がうれしいやら楽しいやら。


『はっぴばーすでーとぅーゆー

　はっぴばーすでーとぅーゆー

　はっぴばーすでーでぃあ、』


しーんさーん。
俺はまぶたを閉じた。

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