【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

156話 ページ28

あ「しんくんは気まぐれだからなぁ。止めに行ってくれてありがとうね」

れ「…えらい?」

あいすちゃんの方は見ないで聞いた。
もしよければ聞こえていないでほしいと思いつつ、つぶやくように言う。

あ「うん、えらい!!今まであいつを止めようとした人なんかいなかったからね」
れ「そ、そっか」

(ちぇ)

今日は頭、撫でてくれないんだな

実はちょっと――いや、結構期待していたのを
振り払おうとぶんぶん首を横に振る。どうしたのと笑われた。

あ「あーあ、髪ぐしゃぐしゃ〜
　女の子ってそういうの気にするもんじゃないの?」

王子様スマイルでくすくすってまだ笑いながら、ぽん、と撫でられる。
すーすーすーって髪をやさしく撫でて、「ほら戻った」ってもう１度笑った。


頭をぐしゃぐしゃにした時
えらい時

あたし、頭を撫でてもらえるのか。ふむ。


.









.









.


『えーっと…こう、で、こう』

ゆ「そう。お上手」

ドヤ顔を向けると「よくできました〜」と手を叩かれる。

はじめて私から“この曲弾けるようになりたい”とリクエストしたのは、
ついこの間ゆりんくんから借りたCDの中の曲だった。

もちろんギターソロなんてたいそうな部分でなく、主旋律を少し


まだ誰も来ない教室の
ど真ん中で床に２人、座って静かに練習。

しとしと雨が降っているのもなかなか悪くないと思う


ゆ「ねぇ手ー出して?」
『ん?』

ぱっと右手を出すと、萌え袖の右手が伸びてきて、指先をつかんだ。

『なぁに?』

ゆ「固くなっちゃったなぁと思って」
『あー…そうだね、ちょっと痛い』
ゆ「…ごめん」
『隊長が謝ることじゃないでしょうに。それにね、

　私楽しくて好きでやってるよ?』


話し声が途切れる。

(雨の音だ)

(…夏代くんまだ来ないのかな)

女子に呼び出されたってあほみたいに浮かれてたの、結局なんだったんだろう


まだ、目の前の彼は何も言ってくれない。
私何か変なこといった?言っ…てない、はず

萌え袖と彼の顔を交互に見るのを10回くらい繰り返しているとやっとしゃべる。

ゆ「好き?」

『うん好きだよ。楽しい』
ゆ「好き?」
『好き〜』
ゆ「うれしい」
『…ん?』

じょーだん、そう言ってかわいく笑った。
私の指先をつまむのとは反対の萌え袖でくふふっと口元を抑える。

なんだかうれしそうだ、ほんとに

――突然ドアが乱暴に開けられる


夏「俺をッ!!なんだと思ってんだッ!!!!」


ちくしょぉぉぉぉと吠えだしたきのこを取りあえず叩いた。

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