【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

149話 ページ20

『そっか〜そんなことがあったんだ〜』

ま「僕が悪いんですよ…」
天「全面的にね」
ま「うっ」

かわいらしい声。と、少年みたいな芯の通った声。
前者はまふくん後者は天月くんというのを、女子のうわさで聞いていた。

“そんなこと”っていうのは
床をぞうきんで拭く掃除をしていたゆりんくんの頭の上から、こけたまふくんの持っていたバケツの水が降ってきたというできごとだったらしい

そして私の視界は今現在夏代くんの両手で真っ暗。

『ゆりんくんまだ?』
ゆ「んー待って、腕入れるとこ間違えた」

後ろから声がする。

夏「ひーゆりんほっせぇ、白い」
天「ひょろっこいよね」

(だろうな)

かさかさ布の擦れる音がして、そろそろ目を抑える手が汗ばんできてやだなと思っていたころ
近くで「もういいよ」という声がして、別の手が目の前の手をはがしていった。


ゆ「お待たせしました」

さっきはとっさに目を覆われて気づかなかったけど、近くで見れば確かに髪が濡れていた。
ぴっとり額についた前髪に手を伸ばしたらその腕をつかまれる。


ゆ「なぁに?」
『いや張り付いてんなと思って』
ゆ「そうですな」

首を数回横に振ると脱いだシャツをリュックに突っ込んで「行こう」と言った。

今ので水滴をはらったつもりだったんだろうが、まだ数滴が彼の頬やら首やらを伝っていく
見ずに濡れたせいで天パも大人しくなってるみたい

…急に暗くなる。


ゆ「見すぎ」


ちょっとぞうきん臭い片手が両目を抑える。うがぁ臭い…。
ていうかそんな見てただろうか?ううん、そんなつもりじゃないし

(…いや、見てたか?)

そう思った瞬間なんか恥ずかしくなってきて、見てないけどごめんと返した。

手が退いてぞうきんのニオイも退いて開けた視界には
にやけた天月くんとまふくんがいる。



グラウンドの部活動の声が聞こえ出したのを聞いてもうそんな時間になっていたことに気づいた。

窓から少し覗いた日差しにまぶしそうに目を細めていた夏代くんをうながして、教室を出る。
まだニヤニヤしている２人に「ばいばい」と手を振ると

「ごちそうさま」と返される(そのあと夏代くんにいいから!!って背中を押された)。


『あ、暗くなった』

さっき夏代くんに降って注いだ日が陰る。
灰色の雲がゆっくり空を覆いだしていて、それにゆりんくんも気づいたのか

ゆ「傘忘れたんだけどなー…」

誰にともなくつぶやく。
指先がぶつかって、夏代くんが暗い空に気を取られているうちに指が絡んだ。

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