【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

140話 ページ11

飯にくり出した。

下駄箱まで行く途中、角のところで正面からゆりんとまふくんが来たから
くるりと向きを変えてAを押しつつ階段下に隠れた。ゆりん絶対なんかいうじゃん?

それ以外は特に何もなく、普通にあいつと昼飯を食った。テスト勉強もちょっとだけやった。

あんまりあいつが美味そうにオムライス食ってるから、ひと口もらった。


今日は２人だけだったからだろうけど、始終「孝明くん」と呼んで

あついね
おいしかったね
明日部活だね

何か言う度に笑った。何がそんなにうれしいのかはわからないけれど、ずーっと笑顔。
どうせならそれを全部いぶに言ってやってくれればいいのに、と

その溢れんばかりの幸せをあいつに分けてやってくれればいいのに、と

思えば思うほど「孝明くんってば」なんて声が耳に頭に響いて
やっぱり家に行ってでもいぶも連れて来ればよかったなぁって気怠い気持ちになる。


夏「あのさぁ」
『ん?』
夏「…いぶのことどう思う」
『弟』

夏「彼氏っていう選択肢は?」

しばらく考え込む
――くらいはしてほしかったんだけど

『えっ?か、考えたことない…』

聞いた直後にはこれだ。仲の良さが裏目に、というかよくない方向に親睦深まってんな。


夏「ナシ?」
『だからわっかんないって〜でもさ、いぶくんかっこいいとこあるよね』


それはわかってるつもりですよお兄さん


変わらず笑顔でそう言って、いつか家出したいぶを迎えに行った―Aが送り届けてくれた―コンビニを指さして、また笑った。


俺のガリガリくんとAのガツンとみかんは、まるで夏みたいに、しずくを垂らす。



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テストが終わって、リオのところに行こうと思った。

ゆりんくんと頑張った数学はすごくいいデキだ。ふふん。


(リオ、リオ、お腹空いた)

４組の教室を見回す。
いないなぁと再度ぐるっと見ていると、近くを通ったスズムが「あいつトイレ行ったよ」って教えてくれた。

ドアから出していた頭を引っ込めて廊下の壁にもたれる。
昼ごはんはなんだろう?おばさん何作るって言ってたっけなー


「あ、れをるじゃん」


れ「あっ、あいすちゃん、テスト監督?してたの?」
あ「そうそう、Aと夏代のいるとこだよ。しゅーずさんの地学。れをるは?」
れ「数学」
あ「手ごたえどうよ?」

れ「ばっちし!!」

ふん、と鼻息出しながらこぶしをあげる。
そっかそっかって笑うあいすちゃんの手があたしに伸びて


ぽん。





(ほぁ…)

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