【歌い手】＿きみのいろ＿#10【ROC】

457話 ページ49

中学に入って最初のクラスで、席が前の友達に誘われ、軽音部に入った。

私たち２人の他にももう３人いて、５人でバンドを組んだ。
私がキーボードだったので、先輩たちはそういうバンドスコアをたくさん紹介してくれた。

そのうちギターボーカルをしていた子が
好きなバンドの曲をやりたい、って言って

それまで我慢してたのが溢れるみたいに、ベースの子もドラムの子も。

そして次々あげられているバンドは
調べてみると全部キーボードのないバンドとかだった。

もちろん私はそれでも構わなかったんだ
５曲くらいやる中の、１曲か２曲くらい出番がもらえれば、それで。
もともと人前で弾くの好きじゃなかったし。


ところが、私を部活に誘ってくれた子が「それじゃだめだ」と言い出した。
もうひとつおまけに、他の３人たちが全然方向性の違う曲を提案しあってちょっと揉めた。

これはやりたい、あれはやりたくないの繰り返し。


＿＿それでも普段は結構仲がいい方の私たちだったけど


『部活やめようかなぁと思って』


集まって例のごとく決まらない曲の打ち合わせをしているとき、ぼそ、と。

楽しいことがいっぱいあった。
仲が良かったから、引きとめてくれたり寂しがってくれたり、あわよくばこれを気にまた５人でまとまれたら、と思った。

「あー…そっか。なんかごめんね」

(なんかって何)


これが中１の冬。



４人が４人とも良い人なのは変わりなかった。
…そりゃあ、ちょっと言い方がきついとか拗ねるとめんどくさいとかあったけど。

だから部をやめてからも全然、普通だった。
廊下で会ったら手ぐらい振るし、シカトするとか嫌がらせじみたものは何も。

同じクラスの子も、結局中３になるまで普通に仲が良かった。
時々部活の話もされた。なんとかうまく足並みを揃えられたらしい。

私はと言うと、その頃から、放課後にひとりでうろうろ寄り道をするクセがついた。

それはとっても楽だった
気を遣いあうことも我慢させることもなく、嫌な思いも無い。

(なんにも、無い)


なんだったんだろう、と思った。
私が一瞬でもあの部活にいた意味はあったんだろうか、って


―――どこにいても誰といても、おしまいは全部同じなんじゃないかって。


.


この部活の人たちとなら、きっと何かを残せる、と思った。

思い出でもいい
傷痕でもいい


ゆ「忘れてたんだけどさ」
『うん?』

(もう手放したりしない)


ゆ「メリークリスマス」



こわがってばかりじゃ、だめだ。

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