413話 ページ5
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その日の夜。
日付はとっくに変わって、1時半をまわろうかという頃。
彼の部屋の電気はまだ、点いたまま。
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部屋をノックする音。
美「入ってもいい?」
E「もちろん」
寝間着の上に白くてぶあついカーディガンを着た姉ちゃんが
まだ起きてるの、何してるの?、とぼくの手元を覗き込んだ。
美「あら、世界史。えらいじゃない」
そう言い、笑って頭をなでてくれる。
美「あなたは誰?」
シャーペンを動かしていた手が止まる。
うれしくほころんだ気持ちが、一瞬で固まったような
ほんのひととき、心臓が止まるような。
(どうして)
(誰でもいいじゃない)
イスを90度右にまわして姉ちゃんと向かい合う。
やさしいひと―――昔どんなだったかはぼくには関係ない。
細い体にぎゅっと抱きついた。
E「姉ちゃんも僕にいなくなってほしいの?」
いい匂い
姉ちゃんが大きく息を吸ってゆっくり吐くのが伝わってきて、少し落ちつく。
落ち着いてくると同時に、自分のゆく末がだんだん視えてきて
悲しくて怖くて、鼻の頭とのどがじんじん痛くなってきた。
美「違う」
(泣いちゃいそうだ)
E「ぼくは息吹じゃないよ、あいつと違って世界史が得意だし、食べ物の好みだってちょっと違うし、大切な人にはちゃんと好きだよって言えるし、それを行動で伝えるし、2号とも違うんだ、だってぼくは誰も嫌いにならないし、独りは嫌だし、でも嫌なことから逃げたりしないし、息吹を守ってやろうだなんて思ったことないし、絶対絶対、消えてもいいなんて考えたりしないしっ…」
もうめちゃくちゃだった。
だって怖くて
でも姉ちゃんは切なそうな顔でぼくのこと見下ろしてて
やさしく抱きしめ返してくれる腕が、あやすみたいに頭を撫でてくれるんだ
E「姉ちゃんは息吹を返してほしいって思ってるんでしょ?」
もう1度強く言われる、「違う」
美「違うよ、あなたも息吹も大切なの、だからね
息吹が不安そうな顔をするのも、あなたが泣いているのも嫌」
姉ちゃんの寝間着のお腹は、ぼくの涙でぐっしょり濡れていた。
名前を訊ねられ、他に答えようがないから、仕方なく3号だって言う。
E「ぼくは息吹じゃない」
美「うん」
E「それでもぼくのこと好き?」
―――苦しいくらい抱きしめられて
美「すき」
…あぁ、そうだ
ぼくは大事なひとたちにこう言ってほしかったんだ
ぼくが好きなひとたちに、ぼくを好きだって言ってほしかったんだ
(忘れてたなぁ)
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モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - アゲハさん» コメントありがとうございます、いつもうれしいです!まさかそこ好きって言われると思ってなくて動揺しました(^-^) (2017年8月10日 13時) (レス) id: 1b9f958ee6 (このIDを非表示/違反報告)
アゲハ(プロフ) - #10、お疲れ様でした!毎度思いますがあとがきすっごくすきです…!!これからもお話楽しみにしてますね〜(*^^*) (2017年8月10日 3時) (レス) id: 375e43bb38 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - りゆみさん» コメントありがとうございます、長らくお読みいただいて嬉し恥ずかしです!!(*´-`)ここのとこ暗い雰囲気続いてますが楽しんでいただけたら幸いです~◎ (2017年8月1日 16時) (レス) id: f70edfb1d2 (このIDを非表示/違反報告)
りゆみ(プロフ) - 初期の頃からずっと見てます!もう、本当に面白くて占ツク作品の中で一番好きです!!そして最近の夢主ちゃんとその周囲(特に3年組)の絡みが物凄く楽しくていつも応援してます!!!これからも頑張ってください♪ (2017年7月31日 1時) (レス) id: 9710d00091 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - キットカット(紅芋味)さん» コメントありがとうございます!!はいもう…気がついたらこんなに時が経っておりました…(笑)もう少しお付き合いください(^-^) (2017年6月21日 6時) (レス) id: f70edfb1d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モノクロメロディ―。@ついった | 作成日時:2017年6月20日 20時