【歌い手】＿きみのいろ＿#10【ROC】

420話 ページ12

龍「あれ?きみ文化祭の時の」

龍さんがそう言って視線を向けているのは、れをるちゃんじゃなく私の方。

(…あ、もしかして)

『３年２組のカジノに連れて行ったときの?』
龍「そうそう、やっぱりまた会ったね〜」

花「何、龍くんてば文化祭来てたの?」

隣でれをるちゃんが「本物だぁ」とつぶやくのをよそに
私は、目の前の売れっ子モデルさんをまじまじ見てしまう

本当に、こうして近くで見れば見るほど、似ているな、って。


――――ふと龍さんと目が合う


龍「そんなに見つめられると照れるなー」

『えっあっごめんなさい』
花「爪の先ほども照れてないでしょうに」

花ちゃんには敵わねーな
肩をすくめた。次いで、花さんの友達なのかと訊かれる。

れ「ぶ、部活の後輩!!ですだわよ!!」
龍「ふーん…?てことはあれか、瞬もいっしょか」

“瞬”ってしんさんの名前だ

『はい。お世話になってます』

私がそう言うと、龍さんが心底驚いたような顔をした。
あれ、私なんかマズイこと言ったかな

龍「瞬が?君らに?お世話?」

れ「しんく…先輩めっちゃやさしいですよ、遊んでくれるし」
龍「え、何して?」
『ゲームとか…あ、たまに勉強も教えてくれます』

龍「ねぇ花ちゃん、この子らの言ってるのって俺の弟の話じゃなくない?
　瞬が女の子相手にそんな、普通に、遊ぶとか、」

花「本当よ。」


(なんか)

龍さんの中のしんさんって、いったいどういうイメージになってるんだろう?

同じく不思議に思ったのか、れをるちゃんが私の服のそでを引っ張る。
顔を見合わせアイコンタクトで、これは何かあるぞ、みたいに。


ぱんぱんっ


いつもなら部活の終わりに響く乾いた音。
もちろん手を鳴らしたのは花さんで、どうやら龍さんに向けたものらしい

花「さ、その辺にして、あとはゆっくり家で休んだら?
　私たちもやることがあるのよ」

うながされるまま部屋を出て行く
＿＿腑に落ちないという顔をしながら「じゃあね」と言って。

ドアの向こうで、龍さんが帰って花さんがカギを閉める音がしてから
れをるちゃんが


れ「あたしちょっとあの人苦手だ」

と言った。


.


日曜の夜っていうのはどうしてこう、どこもかしこも騒がしいんだろう

(早くひとりになりたい)

そう思って、泊まっていけとしつこく誘われたのを断って帰ってきたのに。
２つあるうちの、まず上からカギをいれて、次にもう１つに差し込んだ時に気づく

(…クソが)


家族の中で上にしか鍵をかけないのは、あいつだけ。

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