【歌い手】＿きみのいろ＿#10【ROC】

409話 ページ1

『雪でも降るのかね〜』


自分はイスに座り、ひざにれをるをのせて、Aが言う。
「寒いからゆたんぽ」というよくわからない理由で、今日の部活の間中こんなふうだ。

あいつがそういうのもわかるくらい、気温は下がり空はどんより曇っている。

『れをるちゃんはあったかいなぁ』
れ「子供体温なんだもん」
『あは、かわいいー』

火曜日――委員会の日。

しんさんがいないのは放送委員だからなのか、はたまたサボりか。
息吹がいないのは、まぁつまり、そういうことだ

全校朝礼でクラスの先頭を行くあいつを見る度に、いぶが学級委員長なのを思い出したりして。


花「う〜ん…そろそろストーブ出したいわね」
Ｋ「明日あいす先生に相談してみようか」

さんせー!!
Aのひざの上で、れをるがバッと両手をあげた。
頬にかかった黒い毛先がぷわぷわ揺れる。

花さんに雑誌を指さしながら呼ばれ、Aの‘ゆたんぽ’がひざから下りて行った。
１つの机に、向かい合って座っていた俺と目が合う。

『…』

夏「僕のひざ来てもいいよ」

『結構です』
夏「えぇー?僕もわりと体温高いよ」
『ばか。早くそれやりなよ、もうあと10分もないよ?』

ちょっとばかし驚いて時計を見上げる。
うわ、マジだ、体育のレポートなんて家で絶対やりたくねぇのに

(つれねぇな)

ふざけてるのか本気なのか、イマイチわからない、わからせないような距離感で
肩を抱き寄せたり腕を組んでみたり、真後ろに立って顔を寄せたり。

Aは決まって「ばか」と言って怒るんだけど

『…あ、まつ毛ついてるよ』
夏「取って取って」

本当は怒ってるんじゃなくて、つまり照れ隠しなのだ。

『ん。』
夏「さんきゅ」

俺にしか見せない表情
俺にしか見せない気持ち

＿＿好きな子ほどいじめたくなるってこういうことだったんだよな

(小学生みてぇ)


シャーペンを握ってうんうん唸ること数分、タイムリミットが来てしまった。
手のひらを打ち合わせる乾いた音が２度響く。

花「さっ、帰るわよ!!」

花さんが雑誌をしまいマフラーを巻いて身支度を整える。
その間にけけさんが机やらイスやらの位置を戻し、くーらーとれをるはブレザーの上に薄手の上着を羽織った。
例の優しいお母さんが２人に出してやったのだろう。

Aがゆりんとしゃべっているのを見て、ふと気づく


夏「息吹は?」

「あっ!!」とれをるが声を出したのと

部室のカギを閉めに来たしゅーちゃんが顔を出したのが同時だった。

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