毒使いの兄妹は (ページ12)

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四年生対五年生の段:8 ページ12

〜NO side〜

尾浜勘右衛門の万力鎖を器用に避け、或いは踏鋤で弾き、いつ仕掛けたのかタコ糸を引っ張り、木の枝を食らわせたりしながら綾部喜八郎は戦っていた。

(天才トラパーは伊達じゃないな……)

下手に踏み込めば落とし穴か、別の罠か。
逃げたと思ったら簡易的な罠を仕掛けたり。

(さて、どうする…………？鷹……？)

「鷹……？」

一羽の鷹が綾部喜八郎の傍に降り立つ。
脚には手紙が括られていた。

「……尾浜せんぱーい」

「んー？」

「猪肉、食べたくないですか？」

・

・

・

泥だらけになりながら、勘右衛門と喜八郎は罠を仕掛けた。
と言っても、巨大な落とし穴だが。

「勘右衛門！」

「喜八郎！」

二人の同室が先頭を走り、その後ろに続いて竹谷八左ヱ門、六条三郎丸。
田村三木ヱ門、斉藤タカ丸。不破雷蔵、鉢屋三郎、浜守一郎と続いていた。
そして彼らの後ろには、巨大な猪。

「マジでデカイな」

「こっちこっちー」

喜八郎に手招きされ、先頭の久々知と滝夜叉丸は左右に別れた。
竹谷と三郎丸は上へ飛び、三木ヱ門とタカ丸は素早く近くの茂みへ。
雷蔵、三郎、守一郎の三人は前方へ高く、落とし穴を飛び越えた。

「〜〜〜〜〜〜〜！！！」

激しい地響きと共に、巨大な猪は落とし穴にハマった。
竹谷は微塵を取り出し、勘右衛門、守一郎と共にタコ殴りにした。
次郎丸がいれば楽なのだが。

「……やったか……？」

「……三木ヱ門」

さすがにもう死んだだろう、と守一郎は手を止めた。
久々知が三木ヱ門を呼ぶと、三木ヱ門は石火矢のさち子三世を取り出した。

「頼んだぞ！さち子三世！ふぁいあｯｯ！」

どおおぉぉん！！

爆発音が響き、火薬の臭いが漂う。
竹谷と三郎丸がゆっくり近付き、猪が絶命しているか確認をする。

「……先輩」

「ああ。……仕留めたぞーーー！！」

「「「うおおおぉぉぉぉぉぉ！！」」」

育ち盛りの彼らは肉にありつける喜びに歓喜した。
歓喜のあまり抱き合った。

久々知と滝夜叉丸。三木ヱ門と守一郎。
竹谷と三郎丸。雷蔵とタカ丸。勘右衛門と喜八郎。

「あれ？ここは私と雷蔵じゃないか？」

鉢屋三郎がそう呟くと、タカ丸はキョトンとした顔をした。

「え？だって今、授業中でしょ？」

「「「「「あっ…………」」」」」

吹っ飛ばされた次郎丸以外の五年生は声を揃えた。
揃えるしかなかった。

久々知は忘れていた。
タカ丸は、そういうのはちゃっかりしているということを。