1 <first story> ページ2
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俺の家には、いるべき人が存在しない。
「ただいまー!!」
玄関から元気な声が響いた。
時計は既に6の針を過ぎ、空は赤茶に染まり始めている。
持っていたゲーム機を手にしたまま、玄関までしびれた足を動かす。
「今日は早かったんですね。」
目の前であせあせと靴を脱ぐ兄に声をかける。
「おーカズ。ただいま、あれ?今一人?」
「はい。二人とも遅くなるみたいです。電話がありました。」
声は兄に、目線はゲーム機へ。
両手を器用に使って画面の中の赤いおじさんを動かす。
「おーまじか。んじゃ今夜はカップ麺だな。」
「はーい。」
兄が階段を上っていったところで俺は再びリビングのソファに寝転がった。
今帰ってきたのは二番目の兄、舞賀翔。某エリート大学に通う、大学二年生。
彼の料理は殺傷能力があることで知られており、自身も認める料理下手だ。
いつかうちのシェフ(五男、潤)が教えたことがあったが、
鍋を焦がすという無駄な才能を発揮してしまったため、それ以来お湯を沸かすこと以外は禁じられている。
今も二回の部屋から戻ってきて台所でお湯を沸かしているようだが、既に危険な音しか聞こえてこない。
「あっつ!!うわっ」
台所からちょっと危険な音がしたが、あえて聞こえていない振りをしそのままゲームを続けた。
...こんな時、ふと思うことがある。
もしも、両親がいたら。
母が料理をし、少し遅れた頃に仕事を終えた父が帰宅する。
そして食卓を囲み、一緒に食事をする。
...こんな景色が、あるのだろうか。
「おーいカズー!!手伝ってくれー!!」
台所で助けを求める声がする。
確か兄は今、"誰でも作れる"(重要)即席ラーメンを作っていた筈だが。
play中のゲームを片手に、重い腰を上げる。
「はいはい何を...
......って翔兄!!なんですか、これは...。」
あまりにもひどい光景に、目を疑った。
「ねえカズ。俺どうしよ。」
泣きそうな顔で兄は言った。
台所がどうなってるって?
...あえてここは、(彼の威厳を守るためにも)お伝えしないでおこう。
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羅瑠亜(プロフ) - しば☆さん» そうなんです!私もこれ、投稿してから気付きまして、お話の一番最後に謝ろうかな~と思ってあえて直しませんでした。じっくり読んでくださるなんて感激です(T T)ありがとうございました! (2015年12月27日 5時) (レス) id: 56711be44c (このIDを非表示/違反報告)
しば☆(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!読み返してて思ったんですが、3の潤くんの先輩のパスが~ってやつなんですけど、これって高3設定ですよね?間違ってたらすみません!(TT) (2015年12月27日 2時) (レス) id: ff7e12661e (このIDを非表示/違反報告)
羅瑠亜(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます(*^^*)嬉しいかぎりです♪これからもどうぞよろしくお願いいたします^^ (2015年12月23日 22時) (レス) id: 56711be44c (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - 初めまして。とても素敵なお話しで、いっきに読ませていただきました。更新は大変だと思いますが楽しみにしています。 (2015年12月23日 21時) (レス) id: 0ef3f92166 (このIDを非表示/違反報告)
羅瑠亜(プロフ) - 美唯さん» 落花に引き続きありがとうございます。頑張ります!(^-^) (2015年12月13日 20時) (レス) id: 56711be44c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧 | 作成日時:2015年11月24日 12時