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「先生！！」
『っ、』
「俺諦めませんから。
先生に見合う大人になるから！」
「やから、やからお願いします。
俺が生徒やからって理由で、突き放さんといてや…」
小瀧くんの言葉が、グサリと刺さる。
逃げたいのに、逃げられない。
そんな衝動を誤魔化すように教室を出た。
先生が逃げてどうするの。
生徒にあんな顔させて、どうするの。
そう思うのに、体はそうはいかなかった。
『っ、崇裕くん、』
苦しくて、座り込んだ。
こういうときだって人気のないところに来る自分は昔から心底空気の読める生徒だったと思う。
分からないわけがない。
″ 生徒って理由で決めつけないで ″
何度も思った。
だったらそんな壁、私が壊すって。
私が先生の気持ちを変えてみせるって。
だけど。
『そんなの、無理なんだよっ、』
大人は大人。子どもは子ども。
曖昧になる高校生という境界線ですら、私は曖昧じゃないんだと思い知らされた。
あと一年、あと半年、って。
いくら待っても、先生は先生。
残酷な暗黙の了解は、あまりに完璧すぎた。
大人は子どもに戻れる。
なのに、子どもは大人になれない。
生徒は生徒から卒業できる。
でも先生は、意思がないと卒業しない。
ずっと、気持ちは変わらなかった。
でも向こうの気持ちも変わらなくて。
「…先生、泣かんでよ」
優しい人ほど、経験する恋は残酷なものだ。
「先生のせいやないから。
俺が、勝手に好きになったんやもん」
「なんも気負いせんと、今まで通り接して？」
近くへと歩み寄ってきた彼。
少し息が切れていて、ああ、私は走って逃げてきたんだと今になって漸く気づく。
好きになった人が、私でごめんなさい。
あなたの先生になってしまってごめんなさい。
追いかけさせてしまって、ごめんなさい。
「先生」
『こたき、くん、』
「好きやで」
君は大人だね。
そんな笑顔で、つらくない？
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