嫌いと言わせてくれない君《桃》 (ページ5)

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『じゃあ単語テストやろうか』

「先生ー！これ補習つきますかー？」

『んー…どうしようね。
正解が二問以下だったら補習にしようかな』

「えー、まじかあ」

教壇に立つのはやっぱり楽しい。

この時間はしげが担任しているクラス。

必然的に小瀧くんとも顔を合わせることになる。

「小瀧、お前昨日補習やったやんな？」

「あー、まあ」

「プリント多かった？」

「いや、別に」

私を見ながら友達の質問に答える彼は、無視。

『今日の単語は何かしらテスト出るからね。
今日は五問だから、三分くらいあれば充分？』

「充分でーす」

『じゃあ始めてください』

私の授業は独特らしい。

小テストなんてやらない先生が多いけど、学生のとき私はその方が効率よく覚えられたから。

始めの三分から五分を使って、毎回小テストをする。

割と効果はいい方なんだよね。この小テスト。

『はい、そこまで。
後ろの人集めてきてください』

蝉が鳴く、暑い夏。

今でも思い出す。

「はい、どうぞ。先生」

『…ありがとう。小瀧くん』

″ 先生、どうぞ ″

″ ありがとう ″

教壇に立つ先生に渡した小テストのプリント。
少しだけ触れる指。

「ありがとう」と返された言葉。

「俺、また補習かも」

小瀧くんといると、懐かしいことを思い出す。

先生は、どんな気持ちで私を見てたのかな。