嫌いと言わせてくれない君《桃》 (ページ19)

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「先生！」

『…』

「無視？なんでなん」

『なんでかは自分の心に聞きなさい』

「俺が先生の気持ち揺らがしたから？」

『っ、あのねえ…』

「へーへー。冗談ですよーだ」

ドキッとする言葉は聞かないフリ。

あの日以来、彼はまたいつも通りになった。

英語のテストで学年一位を取って。
緩い部活にはたまに乱入して、部員じゃないのにキラキラしてる。

なんで。

なんで私、彼の方に視線を向けちゃうんだろう。

「せーんせっ」

『っ、！！』

「好き」

『…そうやって、大人をからかわない』

「お？照れてる？えー、嬉しっ！」

『照れてません。早く授業に戻りなさい！！』

「ははっ、はーい」

ずいっと近づく顔に、思わず顔が赤くなる。

振り回されっぱなし。

だけど、生徒のときとはなにか違う。
苦しくないのに、気持ちにうまく整理がつかない。

こんな振り回され方は、初めてで。

だから余計に彼のことが分からない。

「キスすると思ったん？」

『思ってないから、早く戻りなさい。
何分前に予鈴鳴ったと思ってるの』

「ちぇ」

予鈴がなった三分後。

「先生」

『もう、な……に、』

「ふふっ、かわい。先生、また後でな？」

誰もいない廊下で、彼が唇を合わせる。

『～っ、』

授業、なくてよかった。

『こんな顔、生徒に見せられないよ…』

もし授業があったら、きっと。

私はろくに教えることもできなかったと思う。