嫌いと言わせてくれない君《桃》 (ページ17)

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「誰がなんて言おうと、好きでいる。
何を失ったって、…好きでいたい」

「初めてそう思えた」

きゅっと、ぎゅっと。
締めつけられた胸が悲鳴をあげる。

悲恋だと括ることができるような安易な決意なんて、少しどころか微塵もない。

分かってる。

虚しくて、切なくて、苦しくて…
どんなに好きを募らせても、響くことはない。

どれほど遣る瀬ないことかなんて、痛いほど分かってる。

でも、だけど……

「先生」

その一言で、はっと我に返る。

彼は生徒なんだと。
私は、教師なんだと。

たったその一言で思い知らされてしまうんだ。

なんで、私なんだろう。
なんで、彼なんだろう。

…なんで、断りきれないんだろう。

「…やっぱり、あかん？」

なんで？

『……んで』

『なんで私、教師なんかになっちゃったんだろう』

後悔しないと決めたのに。

もう二度と思い出さないと誓ったのに。

今、彼を抱きしめられないことがすごく悔しくて。
涙を零す自分が、情けなくて。

彼の驚いた顔が歪んで、沈黙を無限のように感じて、また余計に思い出す煙草の香り。

こんなに、好きなのに。

『もし教師じゃなかったら、縛られずに貴方を愛せたかもしれないのに、っ、』

彼を志さなかったら。
彼の生徒じゃなかったら。

彼をまだ想ってさえいなかったら、私は…

…そうじゃなかったら、私はどうしていたんだろう。

「せん、せ、」

『誑(たぶら)かすようなことして、っ、ごめんなさいっ、』

こんな思いにさせるくらいなら、こんな思いを抱えるくらいなら…

あの人との恋なんて、なかった方がよかった。

「…先生、俺、」

″ それでも先生が好き ″

「覚悟なんて、告白したあの日からできてんで」

中途半端な愛なんて、なかった方がよかったのに。