＊16 K ページ16
.
恋がしたい。
そう思ったことなんてなかった。
「望くん、みんなでカラオケ行こうや！」
「ええなあ…また告白されてたやろ」
男子も女子も、結局、見た目と性格。
自分でも悪くないと思える程度のルックス。
つい笑顔を振りまいてしまう性格。
周りに集う人たちによって形成された自分を、好きになるはずも、なれるはずもなかったから。
「小瀧くんのことが、好きです。
もしよかったら私と付き合ってください！」
「…嬉しいんやけど、ごめん。
君の気持ちには答えられへん」
自分を好きだと言ってくれる人の気持ちが、分からなかった。
「小瀧の彼女になる人、幸せだろうね」
「…ははっ、なんやそれ」
垣間見える友達の想いにも、気づかないフリをした。
「……苦し…」
ずっとそうやって、耐えてきた。
『こんなところで、何してるの？
もうすぐ授業始まるよ』
「っえ、…あ、すみません」
『…今度から気をつけてね。
お咎めなしだから、早く教室に戻りなさい』
だから、その言葉に少しだけ安心した。
苦しさを見逃してくれたことに。
何も言わないでいてくれたことに。
言いようもない驚きが積もった。
初めて、具体化した人の優しさに触れた。
その初めてが、貴方だった。
『小瀧くん』
自分の名前すら知らなかった先生が、名前を覚えて、その綺麗な声で俺の名前を呼んで。
笑って、怒って、困った顔して。
先生の言動全部に、愛おしくなって。
「先生、」
『ん？』
「俺が先生を好きなんは、迷惑ですか？」
大人と子ども。
それ以前に、教師と生徒。
有り得ないとしても、それでも。
『…』
「好き。…誰よりも、先生が好きです。
泣いたって、傷ついたって、ずっと変わらない」
諦めるなんて選択肢は、作りたくない。
「ずっと、先生のことを好きでいます」
本気で好きになった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
