常夏《赤》 (ページ38)

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#38 ページ38

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『あ、の、部長、』

「つらいならつらいって言えや。
頼ればええやろ。なんで無理するん」

『無理なんて、してないです。
寧ろ、頼りすぎてるくらいなのに、』

「ほんならまだ足りひん。
俺の知らんとこで泣かんといて。俺の前で泣いてや」

『っ、な、んで、』

涙が止まらない。

一人のときも、重岡さんといたときだって、こんなに泣かなかった。

泣きたかったけど、泣けなかったから。

部長の優しさが染みすぎている。

『なんで、そんなに優しいんですかっ、』

ぎゅうと力を込められて、大きな安心感と、焦燥感に襲われる。

ああ、もうダメだ。

泣き止むどころか、酷くなってる。

「決まってるやん」

「……大事な、部下やからや」

また聞こえた苦しそうな声。

原因が私なのだとして、その原因は私には全く検討もつかない。

でも部長が苦しんでいるのなら、それを半分背負って楽にしてあげたい。

「強がらんでええから。
俺の前では、弱くなってもええからさ」

不思議。

私が欲しい言葉をくれるのは、いつも部長で。

支えてくれてるのも、気遣ってくれてるのも、絶対に部長のはずなのに。

″俺が隣におったらあかん？″

あの甘い声に、不器用な優しさに。

今すぐ包み込まれたいって思ってしまう。

『は、い』

失礼だな。誰に対しても。