常夏《赤》 (ページ20)

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#20 ページ20

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「淳太！」

「は、なにしてん」

「仕事終わった」

「仮にもまだ店の前やぞ」

出させてもらえず、カバンに戻ってしまったお財布。

お店の外で部長にお礼を言ったすぐあと、重岡さんがばーっと走ってきた。

『ふふ、本当に兄弟みたいですね』

「へ？」

きょとんとした重岡さんが私の方を向く。

私服姿、初めて見た。

…かっこいいなんて思っちゃだめ。

簡単に一線を越えようとする自分を必死に抑える。

『部長が、重岡さんは自分の……』

「ストップ。黒瀬、言わんでいい」

「え？なに？俺は淳太のなんなん？
なんやねん、気になるやんか！」

「なんでもないわ。
すぐ調子乗るやろ！絶対言われたない！！」

「なんでやああ！」

意外と子供っぽいところもあるんだな。
なんかちょっと可愛いかも。

なんでやってずっと言われてる部長も、顔は綻んでて嬉しそうなの。

やっぱり兄弟にしか見えないや。

『あの、今日はありがとうございました。
私はこれで帰りますね』

ピタリと言い合いをやめた部長と重岡さんにちょっとびっくり。

小さめに言ったはずなんだけど…

「え、一人で帰るつもりなん？送ってくで？」

『いやいや、ダメです！
部長には今日沢山お世話になったので。
私も大人ですし、大丈夫ですよ。一人で帰れます』

「いや、でも…」

「俺送ってこか？」

少し控えめに、でもはっきりと聞こえた声。

落ち着いていたはずの心臓がまたうるさくなる。

「俺も一人で帰るん寂しいから送ってくで」

「ほな…しげでもええ？」

『え、あ、』

「淳太は帰りや。ちゃんと送り届けるから」

「…ん。お願いな」

『いや、あの、』

な、なんか勝手に話進んでない？

「すみません、俺で」

『あ、いえ、こちらこそすみません…』

「俺は全然大丈夫ですよ。
ほな行きますか。遅くなってまうし」

目下に笑窪を浮かべて笑いかける重岡さんに、今さら拒否なんてできなくなる。

ずるいよ。それは。

『…お願い、します』

ああ、心臓の音が聞こえてしまいそう。