常夏《赤》 (ページ15)

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#15 ページ15

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「他に何かご要望はありますでしょうか」

「いえ、お伝えしたこと以外はお任せしようかと。
完成を楽しみにしていますよ」

「分かりました。尽力させていただきます」

「ええ。そうしてもらえると有難いです」

例え薄着でも、長袖では少し暑い外。

見送りの最後まで完璧な部長は、尊敬に値する人。

流石は成功しただけある。車も付き人も一流。

そんな相手にビクともしない部長の最初の取引現場をチラッとでいいから覗いてみたい。

「無事終わったな。初打ち合わせ」

『すみません、任せっきりで』

「ええよ。最初はそんなもんやし。
徐々に慣れていけばなんも問題ないからさ」

『そう、ですかね』

「おん。それより、上手くメモとれた？
めちゃくちゃ必死に書いとったけど」

『あ、これですか？はい。お陰様で。
話が深まったおかげで大体のニーズも分かりました。
聞き方も引き出し方も、さすが部長ですね』

ありがとうございました。

そう言って頭を下げると、「よく出来た新人やな」と笑って言う。

よく出来た新人なんて言われたことと、お疲れ、って軽く頭を撫でられたことに思わずびっくり。

『え、』

「ほら、ぼけーっとしとらんで。戻るで～」

『あ、はい！』

無意識に頭に置きかけた手を慌てて引っ込めて部長の後を追いかける。

エアコンの効いた社内に入った途端、外にいたときの暑さが嘘のようになくなって。

ほんの少し捲っていた袖を元に戻した。

やっと、第一段階が終わった。

それが妙に嬉しくて、これからが楽しみで。

早く伝えたい。
その甘い声で頑張れって言ってほしい。

企画部に戻る途中、ずっとそう思っていた。