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『ひどいなあ』

「なんでやねん」

『先輩、気づいてますよね』

「なにがー?」





嘘だ。先輩は嘘をつくとき癖が出るんだよ。

隠さなきゃダメじゃん。
私なんかに期待させちゃうよ。





『先輩、いつ歌ってくれますか』

「んー」





さらさらの髪の毛が風に靡く。

目にかかって邪魔だったのか、髪を掻き上げる仕草にさえも心臓が跳ねるのに。

先輩はわざと気づかないフリをするんだね。

ひどいんだよ。その行為。


昼休みに入ったことを告げるチャイムが鳴る。

私が勝手に作ってきたお弁当をカバンから出し、まだ空を見上げる先輩の前に置いた。





「いつ、って言うたやんな」

『…?はい』





先輩が好きだと言った紫色。

風呂敷をその色にするあたり、やっぱり私って単純だって思う。





「俺が気持ちに答えられるときになったら、歌う」





卵焼きを持った箸が止まる。


ずるい。ずるいよ、先輩。
人にわざわざ合わせなくたっていいのに。

ダメならダメで、いいのに。


好きになるまで待つなんて、優しすぎるよ。





「やからそれまでは、俺の声で我慢してや」





さっきまで空を見てたくせに。

そう言って、視線を私に移して。
キラキラの笑顔で私に笑いかけるんだ。


そうやって私と向き合おうとしてくれるところとか、さり気なく、私が先輩の声を聴きに会いに来ることを許してくれるところとか。


…ずるいよ、もっと好きになる。





『…待ちます。いくらでも』





聞こえ始めた蝉の鳴き声に掻き消されそうになる声。


私の頬を撫でて吹き抜けていった夏風は、暖かいはずなのにどこか冷たく感じた。






___Fin

「橙」大好き故に、見れません。→←「紫」あなたの歌が聴けるまで。



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設定タグ:ジャニーズWEST , 短編集 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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凜憧(プロフ) - 一波さん» 一波さん!いつもありがとうございます(´ー`)こちらこそ、今年も沢山の励みをありがとうございました!一波さんも良いお年を(^ワ^=) (2019年12月22日 15時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - のんちゃんの最新作両片思いで焦れったくても〜!って、やきもきしちゃいました!今年も素敵なお話たくさんありがとうございました(^^)よいお年を(^^)素敵な (2019年12月22日 6時) (レス) id: b7aae62310 (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - お返事ありがとうございます!こちらこそ面白いお話ありがとうございます!これからも楽しみに待ってます! (2019年10月4日 23時) (レス) id: 00967ad8ca (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 一波さん» ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです、頑張ります!こちらこそ閲読いただいてありがとうございます! (2019年10月4日 19時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - 私を覚えていてください。今読みました!すっごく後に引くお話だったので新作として書いてくれるの嬉しいです!ステキなお話ありがとうございました。 (2019年10月4日 0時) (レス) id: 00967ad8ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凜憧 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年3月16日 0時

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