夏恋注意報《赤》

▽8 重岡くんのお友達 ページ8

.






『…あのー、』

「はい！」

「なに」

『これはなんの罰ゲームだったっけ？』





放課後の三年五組です。


うん。なんでかな。

私の目には重岡くんが見えるのですが。





「なに言うてるん。アホちゃう？」

『アホって言うなアホって』





アホにアホと馬鹿にされたところで。





『重岡くん？今度はどうしたの？』

「一緒に帰りたいです…！」

『ちょっと待っておかしいおかしい』





ぶっ飛んでる。


明らかに藤井の不機嫌オーラが増したのに。
なんなら君今睨まれてるのに！

え、なんで気づかないの？


クラスのみんなは、なにかを察したように「お疲れ」だけ言って帰って行った。

ねえ、約二年間私とクラスメイトだよね君たち。
助けてくれてもいいんじゃない？え？



どうやら私と藤井プラス重岡くんの絡みは、ここ最近クラスに定着し始めてきてしまったらしく。

誰一人として助けない。



ん？ピコンって聞こえたぞ。動画撮ってんの誰だ。

クラスメイト…じゃない。え、あなた誰？





「一年の小瀧です！」

『いや名乗るんかい』





ああ、頭おかしくなりそう。


私が正常なんだよね？

もう普段の私がどっか消えた。戻ってこい。





「てことで先輩、帰りましょ！！」

『うんごめん、どういうことで？』

「なあ、まだ？」

『いやなにがだよ』

「あ、先輩どうぞ続けてください」

『だから君はなんで撮ってんの！？』





ツッコミ役がまあ大変。

え、休んでいい？もう学校休んでいいですか？





「「帰りたい…」」

『さっさと帰れツインタワー』

「A先輩っ！」

『ストップ、重岡くん可愛いからやめて』





気怠そうに頬杖をつく奴、一つ。

ため息を吐きつつ撮る奴、一つ。

上目遣いの座ってる男の子、一人。



この差はなに？
決まってるでしょ。可愛さだよ。





『ああもう早く帰れ！！』





藤井は寝始めたから置いていくとして。


さて、小瀧？はどうしようか。





『スマホ貸して』

「え？あ！！」

『あ！！じゃないわ。なに撮ってんの』

「いやあ、しげがめっちゃ惚気けるんですもん。
やからどんな人なんやろー思て見てました」

『がっつり撮ってたけどね君』





なんだろう。

この人には話が通じない気がしてきた。



例えるなら…そう。





『なんか、藤井が増えた気が…』

▽9 可愛さには負けるんです→←▽7 不機嫌すぎやしませんか

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す