悪魔祓いと覆る福音 ５ ページ6
「マスター！」
高い少年の声で覚醒する。呼吸が浅い。視界がちかちかと明滅を繰り返している。
私は、今、何を考えていた？ 総てを放棄した退廃的な感情に、支配されそうになった事実が恐ろしかった。そして、ようやく私は自身の右腕から流れる、赤い液体を認知できた。白いドレスが染められていく。熱を持った腕には、植物の種のようにも、琥珀のようにも見える何かが埋まっていた。
「にげよう、こんなとこにいたって……」
私を呼んだ声の主は、紫色の瞳を不安げに向けていた。私の血に染まった右腕を見て、恐怖を示す。
早く、この状況から抜け出さないと。そもそも、悪魔を退散させることばかり考えて、子どもたちを守ることを全然考えていなかった。私は、守る人にならなければいけないのに。
「みんなを連れて逃げて。なるべく遠くまで行きなさい」
「いやだ。いっしょに……いっしょに来てくれ」
私は大丈夫だ、と、口にしようとした途端に、腕の種が黄色く輝き始める。同時に、血管に混ざる異物感。侵食。まずい、まずい、まずい……
悪魔を睨んだ。それしか、出来なかった。スマイルが私を呼んでいる声が遠くなっていく。他のみんなは、今どこに？ 混濁する意識の中、私達の前に立つ、小さな人影。
それは、白い尾を揺らし。それは、小さな手を握り。それは、角の生えた頭をこちらに向け。
「マスター、ごめんなさい」
一言、そう言ったのがわかった。その顔は、哀愁と怒りと覚悟を混ぜた、優しい優しい顔だった。尖った歯が覗き、長い前髪が靡く。隠れていた右目が妖しく赤く光り、左目の爽やかな水色までもを飲み込んだ。そうして彼は、弱き怪物は向き直り、黄色い悪魔に対して静かに言葉を紡ぐ。
「もうやめて。おねがい……きりやん」
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葡萄(プロフ) - ビー玉さん» ビー玉様、再度コメント頂きありがとうございます。これからも自分のペースで、自分らしい作品を書いていきますので、今後とも応援頂けましたら幸いです。 (8月10日 23時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
陽菜(プロフ) - 葡萄さん» 楽しんで書けていらっしゃるなら何よりです！更新楽しみにしております！ (8月8日 16時) (レス) @page21 id: 297ef0e004 (このIDを非表示/違反報告)
ビー玉(プロフ) - いつも読んでて楽しいです！更新頻度が高くても、低くても、主さまが楽しく書けたお話を読めてとてつもなく嬉しいです。数あるWTさんのお話の中で、他とは一線を画すようなお話がすごくカッコいいです！これからも応援してます！ (8月8日 0時) (レス) id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 陽菜さん» 陽菜様、コメントありがとうございます。お気遣い頂き誠に嬉しく思います。長期の更新停止も考えたのですが、1ページ書いて執筆の楽しさを再確認してしまいまして、また楽しんで書くことができるようになりました。ご心配して頂き本当に有難く思います。 (8月7日 23時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
陽菜(プロフ) - すみません、主様がたくさん更新するぞ！と息巻いているところに水を刺すようなコメントをしてしまいましたね、後から気づきました…。申し訳ないです。でも本当に、焦らず楽しんでほしいとは思ってます。無理はなさらずに！！ (8月6日 22時) (レス) id: 297ef0e004 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2023年4月21日 21時
