拝啓、おにーさんお母さんへ、【灯さんとコラボ】 ページ36
◇
少女が住んでいるらしいアパートメントは、生活には申し分ない程には片付いていた。台所に立てかけられていた皿の一枚は綺麗に磨かれているため、少女の生活力が伺える。
母性に溢れた有島は、早速冷蔵庫を覗く。それなりに食材もあるし、夕飯時だからか米も炊けていた。
「よし……っ」
一念発起すると、有島は手際良く料理を始めた。
◇
はっきり云って、家に上がり込んだおにーさんこと有島は料理が上手かった。野菜炒めのようだが、フライパン捌きが並大抵のものではない。
料理はそれなりに出来るとAは自負していたが、自信は粉々に打ち砕かれた。
皿に盛り付けるまで、Aは調理の様子に見入っていたが、やがて有島は恥ずかしそうに、
「一寸……おにーさん見つめられ過ぎて恥ずかしいかな?」
「あっ……!すみません……」
「まぁ、何あれ。俺特製晩御飯、召し上がれ!」
白米に味噌汁、野菜炒めにたまたま太宰が買ってきた鯖焼きが湯気を立てていた。ごくりとAは唾を飲み、箸を取った。
そして、一口。
「な、なんで泣いてるの!?俺なんか悪いことした!?あっ……もしかして不味い!?」
「い、いえっ……違くて……私に、お母さんが居たらこんな味の料理を作ってくれたのかなって思っちゃって……」
「……」
話の暗い影を察して、有島は黙り込む。しかし微笑みながら涙を零すAは有島を責めずにご飯を食べ続ける。
夢の中なのに、酸化しない。
不思議な感覚だった。
◇
「美味しかった……ご馳走様です」
「完食ありがとね、皿洗っとこうか?」
「大丈夫です、有島お母さ……おにーさん」
「ありしままでもいいよ」
有島はにこやかにAへ言葉を掛けた。しかし、瞳の奥の濁りを敏感に嗅ぎとったAは、自分のことはさておき、有島に云った。
「無理、しないで下さいね」
「何のことかな?」
有島は何とも云わないが、ただ一言Aはそう云いたかった。そして、有島の体が淡く発光しだす。夢は、終わりみたいだ。
「次は、現実でご馳走して下さい__」
◇
prrrrrrrr………
「うるさいっ!」
がしゃん、という音とともに目覚まし時計が止まる。葉子の姿も確認でき、現実に戻ってきた実感を覚えた。
大嫌いで、酸化した世界。
それでも。
「ま、ご馳走するまでは死ねないね」
一寸だけ、生きてみたいと思えた。
□□□
八割キャラ崩壊待ったなしですね……灯さま!神でした!ありがとうございました!!
幸せとか不幸とか云うなよ→←拝啓、おにーさんお母さんへ、【灯さんとコラボ】
819人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです! (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして、完結おめでとうございます!大好きです!←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした。心にずっと残る素敵な作品、ありがとうございました。私は太宰さんルート見てみたいです。これからも頑張って下さい! (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時:2019年2月3日 13時