その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ10)

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その男、身の上話をするページ10

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　少し飛んで目を凝らすと、キョロキョロと周りを見る相澤先生の姿が見えた。

　そこへ向かって、ゆっくりと降下する。

「相澤先生、お疲れ様です」
「……鳶嵩、どういうことか説明してくれるよな？」
「はい。……人が少ない所に行きましょうか」
「ああ」

　そう言って2人で少し歩き、人から離れた所で腰を下ろす。

「……俺、3歳の時の両親に見放されたんです」

　俺はポツリと言葉を繋げる。

「俺の両親は、2人とも無個性でした。無個性同士で愛し合い、俺が生まれた。……でも俺は、3歳の誕生日を迎えた時に背中から翼が生え、指の形が変わったんです」

　視線を落とし、話を続ける。

「当然のように俺を無個性だと思っていた両親は、俺を醜いと言い、捨てました。そして俺を保護してくれたのが公安の人だったんです。それから俺は公安で育てられました」

　チラリと目線を隣に向けると、相澤先生は少し驚いた表情をしながらも話を聞いてくれている。

　俺は言葉を続けた。

「公安に来てから数日が経ったとき、『ヒーローに憧れるか』と聞かれました。毎日ビルに来るたくさんのヒーローの姿を、俺はカッコイイと思って眺めていました。まだ小さかった俺には憧れという言葉は分からなかったけど、きっとそれが憧れなんだと思いました。俺が問いかけに頷くと、その日から訓練が始まりました」

　まだ幼かった当時を思い出す。

　目良さんに勉強を教わり、啓悟さんに空の飛び方を、そして戦い方を教わった。

「公安の人に勉強と戦い方を教えてもらい、10歳を過ぎてから任務を与えられるようになりました。それから、公安の特務派遣員カイトと名乗り、今に至ります」

　相澤先生は静かに「そうだったのか」と呟いた。

　俺は言葉を続ける。

「昨日の昼の騒動の時、外へ飛び出した俺に『なぜここにいる』って聞きましたよね」
「……ああ」
「外に不審な人物を見かけて、俺が捕らえなきゃって思った時には動いてました。根津校長にはもう話してます。週明け、俺が見た人物について会議をするって言ってました」
「……そうか」
「俺の話はこれで終わりです。俺、飯食ってホテルに戻ります」

　そう言って立ちあがると、少し低い所から声が聞こえた。

「……俺も、飯一緒にいいか？奢らせてくれ」
「……前来た時に美味しい店を教えて貰ったんです。そこでいいですか？」
「ああ」

　俺は相澤先生とゆっくりと歩き始めた。