その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ11)

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その男、初めての居酒屋ページ11

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　相澤先生に身の上話をし、すっかり暗くなった街を2人で歩く。

　敵(ｳﾞｨﾗﾝ)の被害がない飲み屋街に来ていた。

　そして一軒のお店の前で足を止める。

「あ、ここです」
「……居酒屋じゃねぇか」
「店長には連絡してます。ホークスもたまに来るらしいですよ」
「お前、まだ未成年だろ」
「お酒は飲みませんよ。ここの鶏のから揚げが美味いらしいです」

　そう言ってドアを開けると、賑わう声が聞こえてきた。そしてパタパタと、こちらに駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。

「いらっしゃい！おお、A！待ってたぜ！」
「店長、ご無沙汰してます。2人なんですけど、個室って空いてます？」
「連絡貰った時から空けてるよ！こっちだ！」

　そう言って歩き出す店長――情報収集のために居酒屋を開いた公安の人の後を歩く。

　この人は、啓悟さんと一緒に俺に訓練をつけてくれていた人だ。

　まだ幼かった俺の名前を、ニカッと笑いながら呼んでくれて、頼りになる兄貴分だと勝手に思っている。

　数年振りに見る姿は、変わらず逞しく見えた。

　個室に通され、相澤先生の正面に腰を下ろす。

　注文用タブレットに目を通し、何を頼もうか考えていると、ふと先生が口を開いた。

「店長さん、知り合いなのか？」
「そうです。初めてここに来た時に色々教えてくれた人なんです。店を出したとは聞いてましたが、入りにくくて」
「なるほどな」
「前から入ってみたかったんです。何食いますか？」

　そう言って、タブレットを先生に向ける。

　するとそれを押し返しながら「お前が来たかったんだろ。食いたいものを頼め」と言われた。

　啓悟さんが絶賛していた鶏のから揚げと、適当に色々と注文していく。

「先生、ビール飲みますか？」
「いや、いいよ」
「今日くらい飲んでもいいんじゃないですか？」
「……じゃあ、頼む」
「はーい」

　ビールとカルピスを加え、注文を確定する。

　少し間を置いて、そうだ、と口を開く。

「公安のこと、誰にも言わないで貰えますか」
「構わんが、なんでだ？」
「公安とか関係なく、普通に接したいんです。クラスメイトとも、先生たちとも」
「そうか、分かった」
「助かります」

　その後も、授業はどうだとか、みんなとはどうだとか、色々な話をした。

　お酒が入った先生は、マイク先生との学生時代のことを、少し嬉しそうに話していた。

　普段は見れない相澤先生の姿を微笑ましく思いながら、楽しい時間を過ごした。