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この声は……意識が落ちる前に話していた、管に繋がれていた男の声だ。
「全て改造前の倍以上はある！ 成功じゃ！」
そう言ってはしゃぐ眼鏡の男――ドクターに声を掛ける。
「マジで、身体中焼けそう……おいアンタ、どうにかできねぇのか、コレ」
「急激な能力上昇に、身体が追い付いていないんじゃろ。仕方がないさ。少し落ち着きたまえ」
「ンだよ……――あれ、痛みが引いてく」
先ほどの焼けるような痛みが少しずつ引いていく。
「今は改造前と数値はほぼ同じ……？！ また先ほどの状態に持っていけるか？！」
少し興奮した様子のドクターにそう迫られ、身体に力を入れる。すると再び、焼けるような痛みが襲ってきた。
「うっ……これで、どうだ？」
「……素晴らしい！ 大成功じゃよ！」
ドクターが機械を弄ると、寝台が元に戻った。俺は上体を起こし、少し息をつく。するとモニターから再び声が聞こえてきた。
「ほう、身体能力を操れるのか。それは素敵だな。ところで少年、君の個性はなんだい？」
この状況で嘘をつく勇気は、俺にはなかった。
「……俺の個性はトンビだ。翼が生え、指の形が変わり、視力が格段に良くなる」
「……やはり、成功していたのか」
「何のことだ？」
「オール･フォー･ワン、せっかくの成功体じゃ。個性を与えての廃人化はやめてくれよ」
「分かっているよ。では金井……いや、鳶嵩Aくん、数年後にまた迎えに行くよ」
「……っ！ なんでそっちの苗字を知ってる」
「それはその時になったら話そう。それまでせいぜい生き延びてくれたまえ。まぁ、君の身体なら問題ないだろうがね」
オール・フォー・ワンがそう言うと、俺はゆっくりと意識を手放した。
――
「そして俺は、気が付くと公安の入り口の目の前にいました。それから更に訓練を重ね、今では身体能力をほぼ自在に操れるようになりました。
でも、上限を超えると身体中が焼けるように痛む。これは多分変わりません。俺が今上手く動けないのは、脳無との戦いで上限を超えたからです。
あの時、オール・フォー・ワンは『数年後に迎えに行く』と言っていました。そして死柄木にも同じ言葉を掛けられた。十中八九、ヴィラン連合の後ろにはオール・フォー・ワンとドクターがいます。
あの時の俺の結果を基に、人体実験が繰り返され、脳無が誕生した。……それが俺の予想です」
俺の前に座る4人は、言葉が出ないようだった。会長が俺の横に立ち、口を開く。
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作者名：玲央 | 作成日時：2021年10月7日 21時
