〃 ページ36
.
「これが公表されれば、鳶嵩がヴィランに狙われることはおろか、ヴィランとヒーロー公安委員会の癒着さえ疑われてしまう。それは、ヒーロー社会を担う公安としての信用問題が問われます。
だから鳶嵩には、訓練の賜物だということにして、上限を超えるまで使わせないようにしています。先の戦いでは、恐らく鳶嵩をベースにしているであろう脳無が相手でした。
雄英の教師生徒の命、そして平和の象徴の未来がかかった状況でしたので、上限の開放を認めました。ですが、彼は何かと悪目立ちする。……それを逆手に取って、巨悪の根源を断ち切ります」
会長がそう言い終えると、静かに話を聞いていた相澤先生がゆっくりと口を開いた。
「……それは、鳶嵩を囮にオール・フォー・ワンを誘い出す、ということでしょうか」
「その通りです」
「あまりにも危険すぎます。彼はまだ――」
「学生だ、とでも言いたいのですか？」
相澤先生の言葉を遮り、委員長が語気を強めて言葉を続ける。
「雄英生徒である以前に、公安の人間です。そして、彼自身が納得しています」
俺は相澤先生と目を合わせ、口を開く。
「相澤先生。俺は本来、あの時に生きてちゃいけなかったんです。だから、俺を利用してアイツを倒せるなら、俺は……俺自身を利用します」
「……そうか」
相澤先生は明らかに不満気だ。それを気にしない様子で、会長話を続ける。
「恐らく、これからも雄英高校は狙われることと思います。まずは雄英の警備を強化してください。
合わせて、雄英体育祭の開催については、鳶嵩は出場させず、特務派遣員のカイトとして、警備に回ってもらうことを条件で開催をお願いします。
彼を利用すると言っても、今はまだ目立つべきではありません。話はこれで終わります」
会長はそう言い残し、その場を去った。
俺は頭を下げながら、ゆっくりと口を開いた。
「あの、すみませんでした」
「と、鳶嵩少年？！」
慌てるオールマイトを気にせず、言葉を続ける。
「俺、ヴィランが雄英に攻め入ろうとしていること、知ってました。本当は、マスコミの騒動の時、死柄木と黒霧と接触してたんです。その時に『また来る』って言われました。……でも俺は嘘をつきました。すみませんでした」
そう言うと、根津校長がトコトコと俺の前に立ち、口を開いた。
「君のせいじゃないよ、鳶嵩くん。侵入を許した我々の落ち度なのさ。顔を上げて欲しいのさ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玲央 | 作成日時：2021年10月7日 21時
