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緑谷の分析は少し違う。
俺は一昨日、相澤先生が戦っているところを間近で見ている。
対複数が有利と言っても、それは奇襲してから短期決戦で終わらせる前提の話だ。
そうじゃない場合の対複数戦は長期決戦になる。先生だけじゃ、全て相手にするのは難しいだろう。
一芸だけじゃヒーローは務まらない、というのはその通りだと思うが、生徒を不安にさせないために発した言葉だ。
俺が1人で抱え込んだせいで、相澤先生は……
そう考えながら扉に向かって走っていると、途端に地面から黒いモヤが現れた。
「させませんよ」
そう言いながら、モヤの男が姿を見せた。正確に言うと、実態はモヤに覆われているが。
「初めまして、我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度、ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして……」
そう言い終えたモヤの男と視線がぶつかり、少し笑みを浮かべて言葉を続けた。
「――ああ、鳶嵩Aさん。貴方は初めましてではありませんね。……お久しぶりです、とでも言っておきましょうか」
モヤの男がそう言うと、みんなの視線が一斉に俺に集まる。
今この状況を作ったのは、俺のせいでもある。
俺は視線から逃げるように少し俯いた。
モヤの男が再び口を開く。
「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるはず。ですが、何か変更があったのでしょうか。――まあ、それとは関係なく、私の役目はこれ」
モヤが広がる前に13号先生が個性を発動させようとするが、それより先に切島と爆豪がモヤの男に飛び掛かる。
「ダァッ！！」「オラァ！！」
爆豪の爆発によって、辺りに黒煙が広がる。
続けて切島が言葉を掛ける。
「その前に俺たちにやられることは考えなかったか！」
だが――
「危ない、危ない。そう、生徒と言えど、優秀な金の卵」
――何事もなかったかのように、モヤの男は黒煙の中からユラリと姿を見せた。
「ダメだ、どきなさい2人とも！」
13号先生がそう言い、指を前に出す。
「私の役目は、貴方たちを散らして――嬲り殺す！」
先生が個性を発動させる間もなく、大きな黒いモヤが俺たちを包み始める。
俺は咄嗟に全力で跳び、翼を広げる。眼下には大きな半球状のモヤが広がっている。
飯田が麗日と佐藤を抱えてモヤの中から飛び出してきた。
「みんなぁぁあああ！！」
飯田の叫ぶ声が、虚しく響いた。
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作者名：玲央 | 作成日時：2021年10月7日 21時
