その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ12)

今日:1 hit、昨日:32 hit、合計:91,434 hit

その男、満喫するページ12

.

　翌日。

　公安が手配してくれたホテルのエントランスで腰を下ろしながら、スマホを操作する。

―――

相澤おはよう。昨日は色々とありがとうな
おはようございます。こちらこそ、ご飯ご馳走様でした
相澤ああ
また今度、ご飯行きましょう

―――

　既読が付き、OK！と書かれた猫のスタンプが送られてきた。

　アイコンもそうだが、可愛らしいスタンプを使うんだな、と思い端末を閉じると、少し離れた所から声が聞こえてきた。

「A～！お待たせ～！」
「遅いよ」

　ブンブンと手を振りながらこちらへ歩いてくるのは、私服姿の啓悟さんだった。

　啓悟さんに近寄りながら口を開く。

「目良さん、何て言ってた？」
「戻りは何時でもいいってさ。話はしてあるから、荷物はフロントに預けてください、って」
「ん、了解」
「俺的にはちょっと観光して、夜には東京に戻ってご飯行きたいんだよね～！ほら、Aの合格祝いも出来てないし」
「やった。じゃあ適当にどっか行くか」

　そう言って、着替えやコスチュームが入ったカバンをフロントに預け、スマホを操作し始める。

　俺の隣に立つ人はあくまでもNo.3ヒーローだ。あまり目立ちたくないのが本音だ。

「啓悟さん、どっか行きたいところある？」
「ん～……あ、遊園地とかどう？動物園とか！」
「自分が人気ヒーローだってこと忘れた？子どもが多い所はダメでしょ。水族館なら静かでいいんじゃない？」
「確かに。じゃあそれで！」

　そう言って再びスマホを操作する。近くに水族館があったため、そこへ足を運ぶ。

　少し見て回ると、不意に啓悟さんが足を止めて口を開いた。

「ねえA、この魚って美味しいのかな」
「……水族館の魚を食用として見ないでよ。啓悟さん、お腹空いてんの？」
「それだ！お腹空いた～！軽く何か食べたい〜」
「……はいはい。軽食ね」

　頭で手を組みながら再び歩き出す啓悟さんの背中を見て、少し足を早めて隣に並んで歩く。

　こうして啓悟さんとゆっくり過ごすのはいつ振りだろうか。

　空が赤くなり始めた頃、俺たちは人がいない場所で大きく羽ばたき、東京に向かった。