earliest memory ページ16
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小学4年生の頃、俺は養護施設に入った。
"いい子にしてたら帰ってくるからね、きっと"
母はそう言いながら、
か細く小さな手で俺の頭を撫でると
早足で玄関の扉を開けた。酷く甘い香りを残して。
車から降りて顔を上げたその先には
俺と背丈が変わらないくらいの人たち。
立ちすくむ俺を、
知らない大人が手を取り中へと入った。
母の仕事上、大人に囲まれる事が多かった俺は
そこで生きていく事は、そう難しくはなかった。
ただ群れの中で紛れていればいい。
微笑ましく見守る大人や、仲間と呼べない奴らの中で。
ただ1人だけ、しつこく絡んでくる奴がいた。
そいつは俺とタメで、
俺が来る2ヶ月前にここに連れて来られた
何も飾らない無垢な笑顔は、群れの中で一際目立っていた。
運動神経が良くて、馬鹿で、何も考えていないような
その笑顔に、少し救われた気がした。
そんな夜中に目の覚めた俺は、半寝ぼけでトイレへと向かう。
その時微かに聞こえた、押し殺す様な泣き声に
足が止まった。
彼の少しだけ見えた内面に、
触れてはいけない気がして
見え隠れする重いものが、鼓動を速めた。
ここにいる全員が、何かを抱えて、戦っている。
人知れない闇の中でもがいている。
「あ、おはよ！かず！！」
「…はよ。」
夜中の事がフラッシュバックする。
昨日のことなんて、まるで無かったかのような無垢な笑顔。
「なぁ、かず？」
「なに」
「いい加減名前呼んでくれたっていいだろぉ〜」
「名前…？」(声でけぇんだよ…)
「そ！な・ま・え・！！…ってあれ、もしかして忘れたの？！」
奥二重の線が広まり、今にも涙が溢れ落ちそうになる。
朝から泣き出されるのは面倒なので
「覚えてるよ。」
揶揄うのをやめた。
"まさき"
そう言うと、まさきは大輪の華のように笑った。
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pooh1221(プロフ) - 今、大学1回生のものです。中学３年の頃作者さん本人から占いつくーるの存在を教えてもらいました。今でもよく作者さんの小説を読ませていただいております。本当に文章表現が豊かで頭が上がりません。作者さんの更なるご活躍をお祈り申し上げます (2020年2月13日 16時) (
レス) id: 05dd12fe89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんぱん | 作成日時：2019年11月11日 21時
