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ナベリウス・カルエゴと後悔 ※カルエゴ学生時代 ページ9

オペラ先輩が何故か女を気に入ってからというもの、女はたまに顔を出すようになった。

──終末日、そして収穫祭の後。

「はぁ、ちーくんはやっぱ強いね。無理しても勝てないわ」
「正直焦ったよ。Aちゃん、クマ凄いけど大丈夫?休んでた?」
「不眠不休、飲まず食わずで狩りを続けてた筈なんだけどね……」
「阿呆か、お前は」

結果発表。
シチロウの優勝、女は続いて二位となった。
しかし、量で言えば女の方が多く、ポイントも僅差だったのだ。
かと言って、俺の時のようにキレる訳でもなく、女はこの結果を妥当と見ているらしい。
──俺自身の結果は伏せておくが。

「本気でやって勝てない試合って初めてだなぁ……気持ちがいい」
「そうかい?」
「うん。……楽しい。エギーも、ちーくんも、本気出さなきゃ負けるって思わせてくれる」

言葉をかけず、ただ聞いていた。女の目には涙があった。泣く程悔しいのだろう。
結果に歯噛みしているのはお前だけではない。
それだと言うのに。

「全力を出せるのが、こんなにも楽しい!!」

──女は何故、そんなに笑えるのか。

もうこの頃には、俺達の前であの気色が悪い『笑顔』でいることが少なくなっていた。
今、この瞬間に見た女の笑顔に、どうしてか俺はこんなにも苦しめられている。
その顔をさせるのがシチロウであったのが、酷く口惜しい。

ギリ、と歯が軋む。
そんな俺の様子とは裏腹に、女はこう言い放った。

「ありがとう」

その笑顔は、年相応の少女のようだった。
いつもの『笑顔』は完成品の面をつけているようだったが、今見たその『笑顔』は無邪気なものだと思わされた。

この時点で、気付けば良かった。
それならば、感情がここまで拗れることも無かった気さえしてくる。
俺の生涯を全て塗り替えた出来事、それが──


──音楽祭。歌唱パートを決める時に、その瞬間は訪れたのだ。

ナベリウス・カルエゴと恋の自覚 ※カルエゴ学生時代→←ナベリウス・カルエゴと巻き添え ※カルエゴ学生時代



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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2023年10月13日 0時

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