ナベリウス･カルエゴと独占欲 ページ34
フォカロル･Aの感情は重いが、それを知る悪魔は数少ない。
親密になればなるほど知ることにはなるが、その全容を見せる事は無いが故と言えるだろう。
｢全く、奴らには頭を抱える｣
｢まぁまぁ。そう言いなさんな｣
夕食時。食事をしつつ、今日の出来事を報告のように話していく。
その話を笑顔で聞いてはいるが、存外、こいつはわかりやすいところがある。目が全てを語るからだ。
にこやかに細められた目は確かに俺の事を捉えてはいるが、宵闇を切り取った瞳の奥は据わっている。
｢馬鹿か。言いたくもなるわ。お前はアイツらに巻き込まれたことが無いからそう言えるんだろう｣
｢えへへ、それはそうだよ。でもいいじゃん？それだけ懐かれてるって事だし｣
視線が食事に向かう。
他者と話す時は必ず目を向け、集中する癖があるA。
だが、自分の感情を抑えようとする時は必ず目を背ける。
結婚してから暫くしてわかったことだが、言う気は無い。
｢…………なんだ、気になるのか？｣
｢まさか。仕事でしょ。エギーが教え子に好かれてるのは喜ばしい事の筈だよ｣
『筈』か。言葉に棘も混じってきたな。
こういった独占欲の欠片を拾う度に、言い知れぬ悦を感じている事を自覚する。実に気分がいい。
コイツも俺の言動に振り回されているのだという自覚が持てる。
｢たまには言ってみたらどうだ｣
｢確かに。愛してるよ、エギー｣
｢……そういった事では無いわ、アホ｣
あいつは負の感情に関しては認めようとしない。
目を向けさせようとすれば、『好き』だの『愛している』だので誤魔化され続ける。
面倒では無いことは美徳ではあるが、あと少しゴネろと言いたくなる。
表面的には引っ掻き回す癖に、肝心な所で引き際が良い。腹が立つ。
｢俺はお前に妬く事は多くあるがな｣
｢えぇ？エギー、私に興味あるの？｣
｢なければ結婚などするか｣
｢うーん、正論。でも、エギーの愛情は綺麗だよ｣
そんな訳があるか、と否定してやればどれだけ楽か。
現に、お前の反応をわかっていてこんな事をやっている
お前の感情に爪痕を残す為に、どれだけ傷つけてやろうかと思ってきたか。
悪周期の時は、お前を引っ掻き、噛みつき、お前の身体を傷つけながら配慮もせずに抱き潰すような
だが、それを言ってやるような義理はない。
｢……そう思いたければ好きにしろ｣
その重さは俺だけが知っていればいい。
ナベリウス･カルエゴの妻の研究室→←バラム･シチロウと、弟子と、昔馴染みの悪周期の話
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
