モラクス･モモノキと相談 ※過去編 ページ28
優しい声。
安心する笑顔。
丁度いいタイミングでの相槌。
彼女はパンツスーツで、私は教員服なのに。
なんだか心地好くて、渡されたブラックコーヒーを飲みながら、色んな事を話してしまった。
彼女は最後まで私の話に付き合い、私が言葉に詰まると｢ゆっくりでいいですよ｣などの言葉を投げてくれた。
凄く親身で心に入り込むのが上手な悪魔。
そんな印象。
｢だ、大丈夫……ですか？｣
｢ぴゃぁぁぁ！？｣
遅れてきたバラム先生に驚く私とは裏腹に、隣の彼女は笑顔で手を振り応対していた。
バラム先生もどこかしら安心した様子で胸を撫で下ろしている。
軽く談笑が始まった。
｢またブラックコーヒー片手にどっか行くんだから……あんまり勝手に歩き回っちゃダメだよ？｣
｢あははっ！ごめんごめん！売店で貰っちゃって……｣
｢……ところでなんだけど｣
恐怖が薄れてきた頃に、バラム先生の視線が私に向かう。
どうやら、事情を聞きたいらしいけれども遠慮しているみたい。
彼女も私を見てからもう一度しゃがみこんで視線を合わせてくれる。
｢ごめんなさい、お喋りが過ぎました。……あー……話して大丈夫ですか？無理にとは言いませんが……｣
｢あ、いえ、話しても、大丈夫です｣
｢……ありがとうございます｣
軽くやり取りをしてから、私の話を簡潔にまとめてバラム先生に話してくれる。
そこから軽くお互いの自己紹介を交わしつつ、話題は対抗策に移る。
｢ちーくん、アレ出来ない？｣
｢……僕はいいけど、本人がどう思うかだよ｣
｢アレ？｣
話を進行しつつ、バラム先生に言われた『アレ』という言葉に首を傾げる。
彼女はニコリとにこやかに笑った後、チャーミングなウインクと共に一言。
｢彼ね、ズル発見するの得意なんですよ｣
理解するまで、少し時間がかかった。
｢そっ、そうなんですか！？｣
｢はい。もし良ければですけど｣
バラム先生と私で話が進みそうになった時、彼女が不意に立ち上がって、大きく伸びをした。
｢んーっ！じゃあ私はお暇しようかな。これ以上私がやったら有料になっちゃうから｣
｢あ、そっか。今日は家の仕事で来たんだっけ｣
彼女とバラム先生が会話をしているが、私は置いていかれている。
そんな呆けた私に、彼女の華奢な手が名刺を渡してくる。
｢申し遅れました。私、こういうものです｣
──シンプルな白の名刺に『魔界コンサルタント 兼 悪魔心理学･教授 フォカロル･A』の文字と連絡先が、黒く印字されていた。
モラクス･モモノキの一生懸命 ※過去編→←モラクス･モモノキと奥さんの話 ※過去編
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
