ナベリウス･カルエゴと添い寝 ページ23
夜。
結婚してから変わるかと思ったが、予想外に今でも続いている習慣がある。
｢じゃあ、おやすみ｣
｢おやすみ｣
……俺達は、夫婦別室だ。
Aは挨拶が終われば自室に戻り、私物まみれのベッドで眠りについている。
俺達は同居してから長く、今まで互いに譲歩し合って生活していた。
夫婦別室に関しても、話し合いの末にこのままにしている。
──だが、俺は納得していない。
プライベートな場所が必要だと言うのは理解は出来るが、俺達は『夫婦』だぞ。
それともコイツにとっては『結婚しても』別で寝るのが普通だとでも言うのか。
ベッドに入り、しばらく思案する。
だが、思考も巡り廻って来れば他の事象に移る。
生徒達の事、バビルスの事、家の事……俺は暇では無い。
今思えば、アイツから来る事はあっても俺から出向いたことは少ないな。
俺の家にゴチャついた場所があるのも気に食わん。片付けてやればいいか？
｢……眠れん｣
一度考え始めたら、眠るのも一苦労だ。
つべこべ考えず、出向いた方が早いな。
そう結論付け、ベッドを整えてからAの部屋に出向く。
ドアノブに手をかけ扉を開いた。
｢……え、ぎー……？｣
ベッドまで近付けば、コイツはあどけない表情を晒して目を開けた。
眠りが浅いのは何年経っても変わらんらしい。
いつもよりも柔らかい声を聞く度に、慣れん感情に振り回される。
心臓が激しく脈打っている気はするが、無視だ。
ボケている様子で俺を見るA。
奴の腕に抱えられた抱き枕を引っ掴む。
｢えぎー？なにする──｣
そのまま取り上げ、適当な場所に投げる。
感情任せに投げたからか、風切り音を聞いた気がするが……気の所為だろう。
｢私の抱き枕……！｣
ガシャンと何かが崩れた気もするが、休日は掃除に付き合ってやる。大目に見ろ。
完全に覚醒したらしい奴の腕の中に入り、ベッドに沈ませる。
｢エギー！？何度投げれば気が済むの！？毎回だよね！？｣
｢知らん｣
｢知らんじゃないのよ！？｣
｢今日はお前を抱いて寝る｣
有無を言わせる気などない。
抵抗を見せていたが、胸に擦り寄り抱き締めた腕に力を入れれば、溜息一つで受け入れる。
物分りが良くて何よりだ。
｢はぁ……甘えたですかー？｣
｢お前は抱き枕が無いと寝れんのだろう。俺は上でも構わんが？｣
｢抱き枕ぶん投げた人がよく言いますよ……おやすみ｣
｢おやすみ｣
聞こえる鼓動を聞いていれば、心地良い微睡みが迎えに来る。
今日はよく眠れるだろう。
ナベリウス･カルエゴと妻と旧友と先輩 ※心臓破り後、教師就任軸→←ナベリウス･カルエゴと教え子と妻
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
