ナベリウス･カルエゴと通じた想い ※過去編 ページ19
明け方。
俺を叩き起した女が、｢愛してる｣などと言い放ってきた。
眠気が勝ちそうだったが、ここで聞き逃すような悪魔でもない。
眠い頭と身体に鞭を打ち、話を聞く事にした。
｢……A｣
｢何？｣
｢何があった、お前｣
Aは、視線を伏せてから静かに説明を始めた。
何やら、少し躊躇う様な、静かな声色だった。
｢……夢で、エギーが他の悪魔に取られる夢を見たんだ｣
｢くだらん夢だな｣
｢ね。でさ、飛び起きて｣
｢……｣
｢泣いてたんだよね、私。よっぽど嫌だったみたいで｣
愛する悪魔が、己の夢で泣いていた。
しかも、俺に執着を覚えて。
｢……続けろ｣
｢うん。なんか、『あ、私、自分が思ってるよりエギーのこと好きだったんだ』って思って｣
｢……そうか｣
こんな小っ恥ずかしい台詞を、この女はよく言えるものだ。
聞いた俺の方が照れてしまい、熱い顔を隠そうと口元を手で覆う。
正直に言えば、かなり舞い上がっている。
｢うん。だから、忘れる前に伝えなきゃって思った。……なぁに、嬉しくないのー？｣
｢見るな！今何時だと思っているんだ、このアホ！！｣
顔を見てこようとするAを腕で防御し制する。
傍から見ればじゃれているのとそう変わらんだろうが、そんな事は無い。断じて。
｢ごめんごめん！また自分の部屋戻るよ！……って、え？｣
少し叱ればすぐに身を引く身体が名残惜しく、考えるより先に手を伸ばしていた。
Aの腕を掴み、引き止める。
｢……｣
｢エギー？この手、何？｣
｢……戻る必要あるか？俺達は『夫婦』だろうが｣
言い訳のような言葉選びだ。
だが、引き止めた先、目の前にある表情が赤を帯びていた事で全てが吹っ飛んだ。
｢……あ、え、デレ？デレなのエギー？｣
｢粛に｣
｢えへへ、ワンチャン可愛いね〜｣
｢粛に！ワンチャンと呼ぶな！｣
｢よしよーし｣
｢抱きっ……つくのは、構わんが……クソッ……｣
｢何だかんだ、エギーは私に撫でられるの好きだもんね〜｣
Aの腕の中に閉じ込められ、ベッドの中に沈む。
その胸に擦り寄る事を余儀無くされた。
｢……悪いか｣
｢悪くない。嬉しい｣
囁くような優しさを含む声に、絆される。
撫でてくる小さな手が、随分と心地いい。
｢お前と居ると調子が狂う｣
｢すまんね｣
｢……惚れた方の負けか｣
｢んふふ。いつから好きだったの？｣
｢言わん｣
｢ダメかぁ〜｣
｢ダメだ｣
｢じゃあしょうがないなー｣
｢……お前は昔から引き際が良すぎるな、アホが｣
ナベリウス･カルエゴと噛み跡 ※心臓破り後、教師軸→←ナベリウス･カルエゴとプロポーズ ※過去編
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
